神殺しのクロノスタシス2
私がそう言うと、幼馴染みは、目を見開いて仰天した。

「ここにいるのが間違ってるって…。何言ってるんだよ?」

「…」

…何言ってるんだろうね。本当。

だけど、そう感じてしまうのだ。

「里を出たいって言うのか?族長に、直々に次期族長指名されてるのに?」

「いや、ちが…。里を出たい訳じゃなくて…」

この場所は好きなのだ。

ここから離れたくない。ずっといられるものなら、ずっといたい。

でも、それは出来ないのだ。

出来なく…なってしまったから。

…何で?

思い出せない。私は、何故この場所にいることに違和感を感じているのだ?

「馬鹿言うなよ、シルナ。お前はこの里の生まれで、誰にも文句のつけようのない、未来の族長に相応しい実力を持ってる」

「…」

「お前はこの里に生まれて、この里で育って、立派なイーニシュフェルトの聖賢者として、里を引っ張っていく存在だろ?」

「…そう、なんだろうか」

本当に、私は。

「そうなって良いんだろうか。私は」

「良いも何も、誰も文句は言わないし、むしろお前ほどの賢者が族長になるのは、権利を通り越して、最早義務だろ」

「…義務…」

この里の族長になるのは、私の義務。

そう、義務、義務があるのだ。

私はこの場所で、何らかの義務を果たさなければいけないはずだった。

でも、それは何だ?

族長になること?

それが、私の義務だと言うのか?

それとも…。

「…シルナ、お前ちょっと疲れてるんじゃないのか?族長が無理にしごくから…」

「いや…。大丈夫…」

「昨日なんて、神殺しの魔法が…とか言い出すし。一体どうしたんだよ」

…神殺しの魔法…。

妙に、その言葉が耳に残った。

「あんまり無理するなよ。何かあったら、相談に乗るからさ」

「…」

…何で。

何で、そんなに私に優しくしてくれるんだろう。

だってあなた達は、私を許さな、








…今、何考えたんだっけ?




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