神殺しのクロノスタシス2
「…」

私は、ゆらりと立ち上がった。

最早私は、イーニシュフェルトの聖賢者ではなかった。

「シルナさん?大丈夫ですか?」

「…」

私は、不安そうな顔をする母子を、冷たい目で見下ろした。

そして。

「…消えろ」

「え?」

杖を振ると同時に、母子は真っ黒に焼け焦げた。

ただの一瞬でも、こんな男の子を「あの子」と重ねてしまった自分が情けない。

私は歩き出した。

生まれ故郷。懐かしいふるさとに。

そこには、私の知る人々がいた。

家族達が、仲間達がいた。

「あぁ、シルナさん。丁度良かった、うちで…」

「消えろ」

通りで擦れ違った女性を、私は殺した。

それを見ていた里の仲間達が、悲鳴をあげた。

その悲鳴が、酷く不快だった。

「消えろ」

だから、消した。

家も人ももろとも、全て消し飛ばした。

あっという間に、里は阿鼻叫喚に様相を呈した。

「誰か!誰か助け…」

「痛い!痛いよう!」

「シルナさん!何でこんなことを、」

何で?

何でだって?

分かりきったことを、いちいち言わせないでくれ。

すると。

「シルナ!何をやってるんだ!」

私の幼馴染み…だったモノが、私の前に立ち塞がった。
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