神殺しのクロノスタシス2

side二十音

───────…ここは、何処なんだろう。





暗くて、ぼんやりしてて、よく見えない。

ただ、声だけが聞こえる。

自分が、何処かに寝かされているのだということも分かる。

大人達の声が聞こえる。

「…は、…んじゃないか」

「なん…、…たのか?」

「そん…、…って…」

でもその声は朧気で、はっきりと聞き取れない。

もっと近くで、話してくれれば良いのに。

そうしたら、もっとよく聞こえるのに。

向こうが来てくれないなら、こちらが行けば良い。

そう思って、俺は身体を動かそうとした。

でも、動けなかった。

別に、拘束されている訳じゃない。

でも動けない。

身体に力が入らない。

どんなに起き上がろうとしても、ただ僅かに身動ぎするだけ。

闇雲に振り上げた手が、とても小さいことに気づく。

それはまるで、生まれたばかりの赤ん坊のようで。

…あぁ、そうなんだ。

俺は今、生まれたばかりの赤ん坊なんだ。

有り得ないことなのに、妙に納得してしまった。

日がたつごとに、視野が広がっていく。

動かせる部位も増えていく。

声が聞こえて、目も見えるようになっていく。

そして、気づく。

自分の存在が、何やら不可解なものと思われていることに。

「一体何なの、あの子は…」

母親らしき人。

本能で、それが母親だと気づいた。

母親に向かって、手を伸ばす。

しかし母親は、その手に触れることはなかった。

母親だけではない。

「不気味な子だ」

父親は父親で、俺のことを、化け物でも見るかのように見る。

…どうして?

俺は何もしていない。

何もしていないのに。

どうしてそんな目で見るの?

何で触れてくれないんだろう。

抱き締めて欲しいのに。笑いかけて欲しいのに。

何で誰も、「私」を愛してくれないの?
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