神殺しのクロノスタシス2
その翌日。

久し振りに、母親が触れてくれた。

嬉しかったけど、でもあんまり強く引っ張るものだから、痛かった。

どうせなら、手を繋いでくれたら良いのに。

何で、無理矢理引っ張っていこうとするの?

私はその日、外に出た。

家の外に出た。

家の外があることを、初めて知った。

家の外には、多くの藁や薪が集められていた。

それが何なのか、私には分からなかった。

そんなことより、家の外という場所に出られたことに夢中だった。

あれは何?

そこに見えるものは何?

何で天井が青いの?

聞きたいことがたくさんあって、でも声が出なくて。

いきなり、目の前が明るく、熱くなってきた。

家の山に用意されていた薪に、誰かが火をつけたのだ。

勿論私は、それが火であることを知らなかった。

この明るくて、赤くて、熱いものは何?

何をする為のもの?

好奇心一杯で眺めていると、険しい顔をしたお爺さんがやって来た。

それまで知っている人は、家の中にいる家族と、老婆だけだった。

だから、新しい人に出会えて嬉しかった。

家の外には、こんな世界があったんだ。

面白くて、楽しそうなものばかり。

それなのに。

皆、何でそんなに険しい顔をしているの?

お爺さんが、私を抱え上げた。

抱っこされるなんて、記憶にある限り初めてで、私は嬉しくなる。

しかし。

お爺さんは、ぶん、と腕を動かし。

メラメラと燃える、赤くて熱いものの中に、私を投げ入れた。

身体が焼け、激痛が走った。

息が苦しいよ。

誰か助けて。

それなのに、周りで見ている人達は、何故か神妙な顔をして。

両親は、両手を合わせて祈っているようだった。

何で、こんな酷いことをするんだろう?

折角外に出られて嬉しいのに。

どうして?

どうして皆、そんな目で私を見るの?熱くて痛いのは、薪が全て焼けてなくなり、炎が消えるまで終わらなかった。

途中、血相を変えた誰かが、追加で薪を投げ入れたけど、無駄だった。

赤くて熱いものがなくなって、私はホッとした。

あぁ痛かった。

しかし、これは何だったんだろう。

家の外に出る為には、この試練を受けなければならなかったのだろうか。

私はちゃんとやりきった。

痛かったけど、ちゃんと我慢出来た。

だから、皆喜んでくれるはずなのに。

何で皆、私をそんな目で見るの?
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