神殺しのクロノスタシス2
「あ…?」

横を見ると、シルナもまた同じように、こちらを見ていた。

…お前、本物だよな?

「…しーちゃん」

「あ、二十音…?」

「いや、羽久だけど…」

でも、二十音がお前を、そう呼んでたから。

そうか。

二十音はシルナと、そんな風に出会ったんだな。

「あー…。なんか胸糞悪い夢見せられた気分…」

「同感だよ…。全く、この世にはろくでもない魔法があるもんだね」

「…お前が言うかよ…」

ろくでもない魔法を考案するのは、大抵お前だろ。

まぁ、こいつもシルナの足元くらいには及ぶようだな。

だって。

「幻覚魔法か…」

さっきまで、頭の中に流れてた映像。

あれは、こいつが魔法で見せた幻覚。

俺達に過去の幻覚を見せて、そのまま幻覚に取りこまれて、戻ってこれなくするつもりだったのだ。

「ば、馬鹿な…。何故戻って…」

実際、ちょっと危なかったよ。馬鹿。

あのまま一生ここで終わるんだ、って諦めてたら。

俺は、現実には戻ってこれなかっただろう。

シルナの方も、多分同じ。

すんでのところで思い出したのだ。

本当の自分が、何者であったかを。

「…君は強敵だったよ」

シルナは、冷たい眼差しでシルヴェスタを見つめた。

…あぁ、全く同感だ。

俺達に、あんなものを見せるなんて。

もう付き合ってやる気はない。

シルナが動いた瞬間、俺は時魔法でシルヴェスタの時間を止めた。

同時に、シルナは魔力の刃で、シルヴェスタの心臓を貫いた。

時魔法を解除すると、シルヴェスタは自分の心臓から血が噴き出す様を見て、目を見開き。

そして、一言も発することなく、絶命した。

…シルナにしては、残虐な殺し方をしたものだ。

見せられた幻覚が、余程堪えてるらしいな。

「…これで、『カタストロフィ』は残り一人だ」

リーダーの…ヴァルシーナだっけ。

あいつさえ倒せば、確かに『カタストロフィ』は終わるけど…。

でも、その前に。

「…シルナ」

「…羽久」

俺達には、勝利に対する喜びとはかけ離れたところにいた。

無理もない。

お互い、昔の傷を抉られたばかりなのだから。
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