神殺しのクロノスタシス2
人数分のお茶を淹れて。

「シュニィちゃん、ベリクリーデちゃん。ケーキあるよ、ケーキ。食べるでしょ?」

またケーキ常備してやがる。

しかし。

「あ、済みません。私は大丈夫です。ちょっと今、食欲なくて…」

シュニィは、申し訳なさそうに辞退した。

珍しい。

いつも何だかんだと、シルナのティータイムに付き合ってあげるのだが。

「え~…?残念だなぁ。じゃあベリクリーデちゃんは?どれが良い?」

「私、チーズケーキが良い」

「チーズケーキね。はい。…イレースちゃんと羽久は?」

だから、何で俺達の分まであるんだって。

「私は結構です。…と言いたいところですが、お客人一人だけに食べさせるのも失礼ですから、一つ頂きます。何でも良いです」

「じゃあモンブランあげるね~。羽久、チョコケーキとショートケーキどっちにする?私はチョコケ、」

「俺チョコケーキな」

「羽久ぇぇぇ…」

今日は譲ってやらん。

お前、チョコケーキ食べ過ぎだから。

身体チョコケーキで出来てるの?

「まぁいっか、たまにはショートケーキでも…」

しょぼんとして、ショートケーキにフォークを入れるシルナ。

ケーキをどれにするかなんて、どうでも良い。

「…それで?どうしたんだ、シュニィ」

わざわざ訪ねてくるんだから、何か用があるのだろう。

「あ、はい…。先日の『禁忌の黒魔導書』を巡る一件について、報告書が完成したので、学院長先生にも読んでもらおうと」

「えっ。『禁忌の黒魔導書』?」

あまりに不穏なワードに、さすがのシルナも食いついた。

「いつ完成したの?」

「先月の中頃に…」

「そんな。もっと早く見せてくれたら良かったのに」

「はい。そのつもりだったんですが…。その、先月は学院長、ちょっと…落ち着かれてないみたいだったので、日を改めようかと…」

「…誠に申し訳ありませんでした」

そうだ、謝れシュニィに。

土下座して謝れ。

シュニィはわざわざ、報告書が出来上がってすぐ届けに来てくれてたのに。

お前がグロッキーになってたもんだから、こうして二度手間踏ませてるんだよ。

「とりあえず、一通り読んで頂けますか?」

「分かった」

シュニィは、俺とシルナとイレースに一部ずつ、報告書の束を手渡した。
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