神殺しのクロノスタシス2
「…」

シルナは、ぶるぶると震えていた。

なんか面倒臭そうだから、俺帰って良いかな。

すると。

「…る、もん」

「あ?」

シルナが、何やら呟いた。

「私だって、生徒にアドバイス出来るもん!ちゃんと答えられるもん!」

涙目で、負け惜しみを叫ぶ学院長。

「皆!私に!私に聞いてくれても良いんだよ!私も答えられるから!ねっ!お菓子あげるから!ねっ!」

賄賂で釣ろうとするな。

しかし、現実は無慈悲である。

生徒達は、横で何やら叫んでいるシルナに、全然気づいておらず。

「ナジュ先生~!」

「私も教えてください!」

イケメン先生に夢中。

「そんな…!私じゃ駄目なの…!?私の声は…私の声は、もう生徒に届かないと言うのか…!?」

なんか言ってるぞ。

「諦めろシルナ。時代は、イケメンカリスマ教師だ」

もうあれだよ。

世代交代って奴。

中年が輝ける時代は、もう終わったんだ。

あとは、若い奴らに任せようぜ。

「嫌だ…。そんなの嫌だぁぁぁ」

泣き出すな。

しかし、イケメンナジュを前に、学院長に目をくれる生徒など一人もおらず。

「皆さん、そろそろ下校時刻ですよ。帰りましょう」

ナジュが時計を見ながらそう言うと、生徒達は酷く落胆した様子。

「えぇ~?もう終わりなんですか?」

「もっとナジュ先生の訓練、受けたいです」

「まぁそう焦らず。明日も来ますから」

との一言に、意気消沈していた生徒達の顔に輝きが戻る。

「じゃあ、明日見てくださいね!」

「楽しみにしてますから!約束ですよ!」

「はいはい、分かりました」

生徒達は、シルナを完全スルーで、稽古場を後にした。

と言うか、多分生徒達、シルナのこと見えてない。

あれだよ、皆。ちょっと想像してくれ。

凄く大きくて綺麗なダイヤモンドの横に、くすんだ小石が転がってても、気づかないだろう?

気づいたとしても、興味ないだろ?ダイヤモンドを前にしてさ。

それと一緒。

生徒達に悪気はない。

ただ、ナジュがイケメン過ぎるだけだ。
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