神殺しのクロノスタシス2
生徒達が帰ったことによって、静寂が戻った稽古場。

取り残されたのは、俺とシルナ、そして。

諸悪の根源、ナジュ。

ナジュもナジュで、シルナの感情を察して、慰めの言葉の一つでもかけてやれば良いのに。

忘れてはいけない。

こいつは、そういう人間ではない。

それどころか。

絶望にうちひしがれたシルナを横目に、去り際、

「…ふっ」

と、勝者の笑みを浮かべて、帰っていった。

…あいつの容赦のなさは、イレースと良い勝負だな。

「…おい、おいシルナ。大丈夫か」

さすがの俺も、この状態のシルナを置き去りにして帰るほど、薄情ではないぞ。

俺はナジュではないから、この惨状を前に、シルナがどんな反応をするのか分からない。

ナジュに対抗意識を燃やすのか、いっそナジュはもうクビ!と叫ぶのか。

と、思ったが、シルナはもっと単純だった。

がばっ、と顔を上げたシルナは。

「うぇぇぇ~ん!ナジュ君に生徒取られた~!」

…普通に泣きついてきた。

鼻水つくから、抱きつくのやめろ。

「私の生徒なのに~!私の~!」

「はいはい…。お前のではないけどな…」

結局俺は、シルナが泣き止むまで、その場でシルナを宥めることになるのだった。

何の罰ゲームだ。
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