神殺しのクロノスタシス2
「ナジュ君!!」

「はい。何で仁王立ちなんですか?」

ナジュ。そこは気にするな。

「君は!今!学院の!風紀を!乱している!」

シルナは、いちいちスタッカートつけて強調しながら、ナジュに説教を始めた。

説教ってか、言い掛かりでは?

別に風紀を乱している訳では…。むしろ、生徒達が苦手な実技をフォローしてくれて、有り難いのでは?

しかし、シルナにそんな理屈は通用しない。

シルナは完全に、ナジュを「自分から生徒を奪った敵」と認識している。

何だ。このどうでも良い争いは。

ナジュに至っては、何故自分が土俵に上げられたのかすら納得してないだろうな。

「はぁ、そうですか」

お陰で、この返事。

「そうですかじゃないよ!」

「そうでございますか」

「丁寧に言えば良いってもんじゃないの!」

あまりにも不毛な争いが勃発している。

ところで俺、関係ないんだけど。

帰って良い?

「私がいない間に、私の生徒を横取りして!」

だから、お前の生徒じゃないって。

「しかも、若いからってい、イケメンオーラを出して、女子生徒をたっ、たぶらかして!」

シルナ、苦しいぞ。

するとナジュは、案の定。

「いやぁ、女子生徒に人気で済みません」

煽っていくスタイル。

お前はアレだな。

とりあえず、燃えてるのを見たら、何も考えずに油を注ぐタイプだな。

「~っ!!とにかく!もうあんなは、破廉恥なのは禁止!禁止します!」

「え?僕、何か悪いことしました?」

「ふぇ?」

「放課後に、生徒の自主練に付き合ってあげてるだけじゃないですか。あなたも以前からやってるでしょう?」

「そ、それは…!」

正論だ。

何処までもナジュの方が正論だ。

「それを責められる筋合いはありませんね」

「ぐぬぬぬ…」

圧倒的に、形勢がシルナに不利。

「それに、僕も忙しいんで。毎日自主練に付き合ってる訳じゃありませんから」

「あ?そうなの?」

思わず口を挟んでしまった。

「えぇ。今日は約束しちゃったから、自主練見に行きますけど。明日の放課後は予定が入ってて」

「予定?」

「それが、新聞部が僕を取材したいらしくて」

「…!」

…新聞部、って。

それ、お前の…。

「えぇ、僕が生徒の振りして学院に潜入してたとき、所属してた部活ですね」

「…」

…忘れてはいけない。

ナジュは、今でこそイーニシュフェルト魔導学院のイケメン教師をやってるが。

少し前まで、学院のスパイだったのだ。
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