神殺しのクロノスタシス2
そもそも、魔導学院に遠足、要る?

「ちなみにイレース、ラミッドフルス魔導学院では、遠足は…」

「あるはずがありません」

だよね。

魔導師になろうという者が、楽しく遠足なんて、ラミッドフルスの鬼教官が許すはずがない。

「遠足なんて必要ありません。経費の無駄遣いです」

今や学院の大蔵省となっているイレース、さすがに財布の紐が固い。

「駄目だよ!遠足は必要!生徒達と楽しく遊んで、お菓子食べっ…あ、そう、見聞を!生徒の見聞を広める為にね!」

おい、本音。

本音出てるぞ。

「生徒とお菓子でも食べたいのなら、グラウンドにでもシートを敷いて食べれば良いでしょう」

「そうじゃないんだよ!だって生徒とお菓子食べることなら、今でも普通に出来るもん!」

お菓子目的だって、はっきり言っちゃったよ。

隠す素振りくらいは見せろ。

いや待て。ナジュがいるから、隠す素振りしても無駄なのか。

結局お菓子目的なのは変わらない。

「それにね、ほら。親元から離れて寮生活で、生徒達もほら、刺激がね?たまにはこう、学校から離れて、ね?息抜きは必要だよ」

「…」

白い目のイレース。

するとシルナは、あわあわと言い訳を並べ立てた。

「これも生徒達の…そう、精神衛生って奴だよ!たまには学校から離れて、日頃の鬱憤を晴らす。そうすることによって、日々の勉学も捗ると言うものだよ」

めっちゃ良いこと言ってる気がする。

ただし、説得力がまるでない。

「あくまで、遠足は生徒達の為、と仰る訳ですね」

「そりゃあ勿論!」

「分かりました。じゃあナジュさんと羽久さん、あなた方は一年生生徒達を引率してください。私が四年生を引率します」

「えっ」

愕然とするシルナ。

「了解でーす」

快諾するナジュ。

「まぁ俺も異論はない」

毎年連れていってるからな。

「学院長は、学院で留守番をお願いします。良いですよねそれでも。遠足におけるあなたの存在の有無なんて、生徒の息抜きには関係ありませんから」

「…」

半泣きで、ぷるぷると震えるシルナ。

そして。

「ごめんなさい遠足行きたいです、お願いします私も連れてってください!」

恥も外聞もなく、連れてってもらえるなら土下座も厭わん風に。

シルナは、イレースに泣きつき。

結局、イレースが溜め息混じりに、シルナを連れていくことに了承し。

シルナは、もろ手を上げて喜んだのだった。

何だ。この不毛なやり取りは。
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