神殺しのクロノスタシス2
さて、生徒達全員にチケットを渡し、団体客用のゲートから中に入り。

念の為に点呼も済ませ。

あとは。

「はい、じゃあ皆、11時半に中央広場集合。時間厳守でな」

「分かってると思いますけど、くれぐれも、動物に触ったり、勝手に厩舎には入らないようにしてくださいねー」

触るのはまだしも。

勝手に檻の中に入ろうとする生徒はいないだろ。さすがに。

可能性があるとしたら、シルナだけだ。

勝手に入ってろ。

「それじゃ、お昼まで解散!くれぐれも禁止行為はしないこと!」

そう言って、生徒達を放牧した。

生徒達は、各々見に行きたい動物の厩舎を目指して歩いていった。

意外と楽しそうだ。

そうだよな。いくらイーニシュフェルトの生徒と言えど、まだ一年生。

ちょっと前まで、まだ小学生だった身だ。

今日くらいは、童心に返って、無邪気に楽しむと良い。

そう思えば、動物園にして正解だったかな。

平日に来た為か、他の客も少ないし。

多少騒いだとしても、迷惑になることはなかろう。

そこは、ちゃんと弁えてるはずだ。

あとは、勝手に楽しんでくるだろう。

…で。

「羽久、ペンギン!ペンギン見に行こうよ!あっ、ウサギもいるって!どっちから先に見に行こうか!ねぇねぇ」

…こいつ、どうする?

ナジュと協力して、オランウータン辺りの厩舎にぶち込んでくるか。

オランウータンに迷惑だな。

「学院長が、動物園ではしゃぐな、馬鹿」

みっともないことこの上ない。

生徒に示しがつかん。

しかし、全然気にしてないシルナ。

「やっぱりペンギンにしよう!ねっ、羽久行こ」

「…」

多分今、俺が何を言っても、通じないんだろうなぁ。

そんなにペンギン好きか?

そりゃまぁ可愛いけども。

「…分かった、分かったよ。行けば良いんだろ」

こいつを放っておいたら、本当に何処かの厩舎に迷い込みかねんからな。

引率の教師を引率する教師って、どういう状況だよ。

「どういう状況も何も…。こういう状況ですよ」

「お前はお前で…。人の心を勝手に読むな」

「で、ペンギンでしたね。すぐそこがペンギンですよ」

「お前も俺達についてくるのか…」

いや、まぁ別に良いけどさ。

なんか、この場で俺だけが本当の意味で引率者って気がするの、気のせいだろうか?
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