神殺しのクロノスタシス2
でっかいキリンにたっぷりはしゃいだシルナは。

次に、シルナは小動物エリアにやって来た。

なんでも、そこでウサギやテンジクネズミなんかと、ふれあい体験が出来るそうで。

「うわーもふもふして可愛い!これ可愛いよ羽久!ちっちゃい二十音みたい!いや二十音の方が可愛いけど!あったか~い。もふもふ~」

良い歳して、小動物とふれあってはしゃぐな。

と、何回言っても無駄なので、もう言わない。

いややっぱり言う。だって気が済まないから。

良い歳して、小動物とふれあってはしゃぐな。

で、ナジュはと言うと。

「いやぁ良い毛並みしてますねぇあなた。あなたが飼われる身でなかったら、連れて帰って、串焼きにして食べたいくらい可愛いですよ」

ウサギを撫でながら、愛でているのか襲おうとしているのか。

そりゃウサギ肉は美味いと言うけれども。

動物園でそれを言ったらおしまいだろ。

水族館でも同じことが言えるな。

すると。

鬱陶しそうにシルナに撫でられていたテンジクネズミが、とうとうおっさんに撫でられるのに耐えきれなくなったのか。

「あっ、ネズミちゃん待って!」

腹立たしげにシルナの膝の上から飛び降り、代わりに。

「あ、こっち来ましたよこの子」

このイケメンのお兄さんに撫でてもらいたいな~、とばかりに。

テンジクネズミが、ナジュの足元ですりすりしていた。

これは可愛い。

「なっ!何でナジュ君なの!?私が可愛がってあげるよ。ほらおいで~怖くないよ~」

めちゃくちゃ胡散臭い笑みを浮かべて、小動物に迫るシルナ。

ウサギ達は本能的に危機を感じたのか、慌ててシルナの周りを逃げ出し。

何故か、一斉にナジュの周りに集まった。

まるで、親元に庇護を求めるかのように。

「よしよし、いっぱい来ましたね~」

「ズルい!何で!?何でナジュ君の方にばっかり集まるの!?」

お前の顔に犯罪臭を感じたんじゃね?

本能で。

「あれですよほら、僕の心が透き通る水のように美しいから、動物の本能で僕の方に…」

それはない。

「ズルいよ!ねぇ待って~!怖くないよ私。怖くないから~」

追っ掛け回すも、ウサギ達は魔王が来たとばかりに逃げ惑い、決して近寄らない。

動物虐待だ。

「もうやめろシルナ。これが現実だ。イケメンはな、いつだってモテるんだよ」

いくら、こいつが勝手に人の心を読む腹黒野郎だとしても。

顔が良いもんだから、動物達も集まるんだ。

お前みたいなおっさんに、勝ち目はないんだよ。

「そんなぁ…。世の中不公平だ…」

「そう。世の中は不公平なもんだ」

諦めろ。そして受け入れろ。

お前はリアルの人間にも、小動物にもモテない。

それが世の中、そして現実と言うものだ。
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