神殺しのクロノスタシス2
…結局。

運悪く、悪阻の波がなかなか収まらないシュニィを、無理に動かして家に帰すのは危ないと判断し。

とりあえず体調が回復するまで、イーニシュフェルト魔導学院の医務室で安静にしていてもらうことにした。

ベリクリーデは、その旨を伝える為に一人で聖魔騎士団魔導部隊に帰り。

シュニィの傍には、同性であるイレースが待機。

俺とシルナは、学院長室に戻った。

「シュニィちゃん二人目かぁ~。今度は男の子かな~。それともまた女の子かな~」

「…」

「どっちでも可愛いだろうなぁ~。アイナちゃんもとうとうお姉ちゃんか~」

「…」

…何故か、一番喜んでいる学院長。

さながら、孫の誕生を待ちわびるお祖父ちゃんだな。

「元気な子が生まれると良いね。ねっ、羽久」

「そうだな」

性別なんて、どっちでも構わない。

ただ母子共に元気で、健康に生まれてきてくれれば。

だが…。

「悪阻って辛そうだね。大体二人目は一人目のときより軽くなるって言うけど…」

「個人差だろ」

必ずしも、二人目だから楽ってことはない。

むしろ、二人目の方がしんどかったってケースもあるだろうし。

二人目だからって、安心は出来ないし、油断も出来ない。

「そうだよねぇ。せめて、アトラス君が早く帰ってきてくれたら良いんだけど…」

「そうだな。アトラスが戻るまでは…シュニィはうちで預かるべきだ」

幸い、アイナはルシェリート家で、ベビーシッターのエレンが見てくれていると言うし。

アトラスが迎えに来るまでは、ここにいた方が良い。

伝達魔法を聞いて、即特急列車に乗ったとしても…帰ってくるのは、早くて明日の午前。

そもそも山賊の討伐任務がある訳だから、それを果たさなければ帰れないし…。

最悪、二、三日預かることになるかもしれない。

その間に少しでも悪阻が収まれば、帰らせても良いが…。

それでも一応イレースを伴わせて…。万一に備えて医療魔導師も付き添わせて…。

…などと、考えていた。

そのときだった。

「…ん?」

ドドドドド、とイノシシか何かが突進してくる音が聞こえてきた。
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