神殺しのクロノスタシス2
「あ~面倒臭い…」

職員室にて。

新米教師ナジュは、片手にペンを持って、くるくる回していた。

そうか。面倒臭いか。

その気持ちはよく分かる。

しかし、そうはいかない。

「仕方ないだろ。もうすぐ期末なんだから」

そう、期末。

期末試験が、翌週に迫っているのである。

故に、俺達教師陣は、試験問題を作成しなければならない。

確かにその作業は、かなり頭を使うし、時間も食うし。

おまけに、試験を受けたら、それで終わりの生徒達と違って。

試験の後、俺達には採点作業というものが待っている。

それも面倒だ。

しかし、お前はまだ良い方だ。

「あれを見てみろ、ナジュ」

「うん?」

職員室は、教師達が机を並べて、満席状態でカリカリとペンを動かしている。

あれ、全部シルナの分身。

考えてもみろ。

イーニシュフェルト魔導学院は、経費削減の為に、教師を三人しか雇っていない。

学院長であるシルナを合わせても、たった四人しかいないのだ。

従って、ほとんどの科目は、あのシルナ分身が担当している。

それは試験問題の作成も同じ。

シルナは、全力で頭をフル回転させ、必死に分身を操り、一人で何科目もの試験問題を、学年ごとに作り上げているのだ。

シルナにしか出来ないぞ。あんな芸当。

でも、如何せんあれをやると、さすがに頭を使い過ぎるらしく。

終わった後は、本体のシルナは、干からびたミイラみたいになってる。

こういうとき、教師が少ないと大変だよな。

まぁ、最近イレース増えたし、ナジュも増えたから、その分は楽になるだろうが…。

「えー…。でも面倒臭い」

ナジュは、溜め息混じりにペン回し。

俺までやる気をなくすからやめろ。

一方の、イレースは。

「…うん。これくらいは出題しても大丈夫でしょう」

ちらり、とイレースの手元を盗み見る。

うわぁ…。エグい問題出してる。

穴埋め形式で、選択肢もないパターン。

しかも、一つ一つの問題の難易度が高い。

重箱の隅をつつくような問題だ。

試験問題に、一切の妥協なし。

いかにもイレースらしい。

さすがは、元ラミッドフルスの鬼教官。

きっと生徒達も、イレースの担当科目は、入念に準備をしてくるだろうな。

でなきゃ、白紙で提出しなければならないことだろう。

それくらい問題が難しい。

俺は…そこまで難しくするつもりはないのだが。

まぁ俺が担当している時魔法は、元々狭き門の科目だからな。

そんなに本腰入れて勉強する必要はない。

選択肢くらいは入れてやるか。
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