神殺しのクロノスタシス2

sideシュニィ

──────…その、少し前。





「具合はどうですか?シュニィさん」

「ありがとうございます。少し楽になりました」

私は、イーニシュフェルト魔導学院の女性教員であるイレースさんに、温かい生姜湯をもらい。

少しずつ、それを飲んでいた。

身体がぽかぽかとしてきて、少し気分が落ち着いた。

「本当に済みません…。お見苦しいところを…」

母校とはいえ、人様のもとに訪問しておきながら。

そこで見苦しく吐き戻し、挙げ句ベッドを借りてしまうなんて…。

しかし。

「気にしないでください。それより、騒がしくして済みませんでした。全く、あの学院長と来たら…」

先程のはしゃいだシルナ学院長の様子を思い出し、私は思わずくすっと笑った。

「後でしばいておくので、勘弁してください」

「いえ…良いんです。それより…本当に済みません。色々と気を遣わせて…」

「あら、おめでたいことじゃないですか」

…おめでたいこと。

そう、おめでたいことだ。

最近、どうも体調が優れないことが多いと思ったが…。

イレースさんに指摘されて、初めて気がついた。

そういえば、近頃…月のものが来ていない。

忙しくて、つい忘れていたが…。

まさか、お腹に子供が…。

私は、そっと自分の下腹部を撫でた。

この中に、いるのだ。

あの人と、私の…。

勿論嬉しい。

子供はいつ頃欲しいとか、何人欲しいとかは特に考えず、自然のなり行きに任せていたが。

いざ出来たとなると、やはり嬉しいものだ。

今度は男の子だろうか。それとも、また女の子だろうか?

どちらでも構わない。元気に生まれてきてくれるのならば。

アトラスさん、きっと喜んでるだろうな。

アイナのときは、気が触れたみたいに喜んで踊っていたけれど。

さすがに今度は二人目だから、もっと落ち着いているだろうか。

早く喜んでいる顔が見たいところだが、生憎あの人は今、北方都市エクトルに出張中だ。

帰ってくるのは明日か、明後日か…。

我が儘を言うようだが、やはり、早く帰ってきて欲しかった。

二人目とはいえ、やはり少し…不安だ。

アイナのときは、「もしかして出来たかも?」と心の準備をして病院に行き、そこで妊娠が分かった。

アトラスさんも傍にいたし…。

一方今回は、何の心積もりもなく、いきなり妊娠が発覚した。

おまけに、アトラスさんも近くにはいない。

そう思うと、やっぱり不安だった。

…早く、帰ってきてくれないかな。

なんて、子供じみたことを考えた、そのとき。

「な、何です?」

地震でも来たのかというほど、ドドドドド、と凄まじい地響き。

こ、これは…まさか。
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