神殺しのクロノスタシス2
「シュニィィィィィィッ!」

「きゃぁぁっ!?」

ドアを蹴り飛ばす勢いで、その人は医務室に飛び込んできた。

「な、何者です!?」

いきなり突撃してきた不審者に、イレースさんは杖を向けた。

しかし、そんなことを意に返す人ではない。

「子供が出来たって、本当なのか!?」

「えっ…。えぇ…」

この人。

一体、何処から来たんだ?

私の疑問も物ともせず、アトラスさんは感極まったように、私に思いっきり抱きついてきた。

「~っ!!よくやった!お前は最高の女だ!ありがとう!」

「は、はい…」

「こんなに嬉しいことがあるか。いやあった!シュニィと結婚したときと、アイナがシュニィの腹の中に出来たと知ったときと、それからアイナが生まれたときだ!」

たくさんあるようで何より。

「とにかくめでたい!本当によくやった。おめでとう!もう何も〒◎↓●∞%★∧⊃」

ごめんなさい。

ちょっと、何言ってるのか分からないです。

散々何やら喜びの言葉を発したかと思うと、アトラスさんは謎の踊りを踊り始めた。

何処かで見たことのある…狂喜の舞ですね。

「…何なんですか?これ」

ドン引きのイレースさん。

これ呼ばわり。

でも、その気持ちはよく分かります。

「…私の…夫です…」

「えっ」

このときのイレースさんの、「あなた、この人の子供生んで大丈夫なんですか?」みたいな顔。

奇遇ですね。私もちょっと不安になってきました。

二人目ならもう少し落ち着いているだろう、なんて甘い考えでした。

一人目だろうが二人目だろうが、関係ありませんでした。

「そもそもアトラスさん…。あなた、どうやって帰ってきたんですか?」

北方都市エクトルにいたのでは?

「え?走ってきた」

「…」

「シュニィに子供が出来たと聞いて、走って帰ってきたぞ」

…そういえば、何だか良い汗かいてますね、あなた。

エクトルから走ってきたんですか。

イレースさんの、「あなた本当に、この人の子供生んで大丈夫なんですか?」みたいな顔。

奇遇ですね。私もかなり不安になってきました。

「聖魔騎士団に行ったら、ベリクリーデが『シュニィはイーニシュフェルト魔導学院で、俺が迎えに来るのを待ってる』と言っていたから、迎えに来たぞ。さぁ、一緒に帰ろう」

「え、あ」

ひょいっ、とお姫様抱っこで抱き上げられた。

ちょ、こんな。

「よし!帰ってアイナにも伝えてやらんとな。きっと喜ぶぞ!」

「ちょっ、あ、アトラスさん?帰るって、まさかこのまま」

「大丈夫だ。よし行くぞ!」

な、何が大丈夫なんですか?

と、思ったが、頭が完全にハイになっているアトラスさんには、何を言っても通じない。

こうして私は、公衆の面前で、お姫様抱っこされたまま家まで帰ることになってしまった。
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