神殺しのクロノスタシス2
「楽しそうだね、ナジュ君」

「…楽しそう?」

膝枕って、皆さんご存知だろうか。

僕は僕の精神世界で、リリスに膝枕してもらいながら、二人でお喋りしていた。

何だか酷く、滑稽な絵面に見えるかもしれないけど。

僕にとってはこんな時間が、堪らなく幸せだと感じるのだ。

そしてリリスは僕の頭を手のひらで撫でながら、そう言った。

「あんなに楽しそうなナジュ君を見るのは、いつ以来かな」

…リリスと一緒にいられたとき以来かな。僕の記憶が正しければ。

その後僕は段々、狂っていってしまったから。

「…楽しそう…楽しそうですか?僕」

「楽しそうだよ、凄く」

…楽しそう、なのか。

それも、凄く。

リリスがそう感じるほどに。

「私、ここでナジュ君のことずっと見てるもん。昔からずーっと」

「ストーカーみたいですね…」

「ナジュ君と同じものを見て、同じものを聞いて、同じ時間をずっと一緒に過ごしてたのだ」

「本当にストーカーですね…」

「でしょ?」

でしょ?ってそんな、得意気に言われても。

でも確かに、リリスは僕と感覚を共有してるから。

リリスが、僕が楽しそうにしてると思うのなら。

確かに、僕は楽しそうなのかもしれない。

「自分では、あんまり自覚ないんですけどね」

教師なんて、初めてやったけど。

何だか(主に羽久さんによる)駄目だしが多いし。

思ったこと口に出しただけなのに。

それが僕の悪い癖って奴なのか?

だって。

僕が何か言葉を口にして、それに答えてくれる人って、今まであんまりいなかったんだもん。

反応してくれるのが嬉しくて、つい。

「僕、寂しがり屋の構ってちゃんなので。構ってくれる人がいたら、構って欲しくなっちゃうんです」

「だよねぇ。ナジュ君昔から、そういうところあるよね」

リリスに出会う前から、僕は寂しがり屋だったからな。

根っこの部分が、全然成長していない。

生まれたときから、寂しがり屋の構ってちゃんです。はい。

傍迷惑な性格でごめんなさい。

むしろ、生きててごめんなさい。

「だけど、今は楽しそうだよ」

「…どんなときに?」

「いつも。イーニシュフェルト魔導学院に来てからずっと」

そうか?

…そうか?
< 543 / 742 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop