神殺しのクロノスタシス2
「シルナ!」

俺は、学院長室に飛び込んだ。

そこには、チョコタルトを一切れ、貪っている学院長シルナ・エインリーがいた。

シルナは、突然飛び込んできた俺に、目を見開き。

そして、何故か慌てて口許を拭い、チョコタルトの箱を隠した。

「た、食べてない。食べてないよ。イレースちゃんや羽久が授業してる隙に、こっそりタルト食べようなんて、」

「そんなことはどうでも良いんだよ!」

お前が、俺やイレースの見ていない間に、こっそり菓子を貪り食ってることなんて、自己申告されなくても分かってる。

隠すくらいなら、いっそ堂々と食え。

そして、今はそんなことはどうでも良い。

「どうしたの羽久。授業は?」

「授業どころじゃない」

「…」

俺の血相が変わっていることに、ようやく気づいたらしく。

シルナの目の色が変わった。

「…どうしたの?」

「…ナジュがいない」

「…!」

それが何を意味するか、分からないシルナではなかろう。

「ナジュ君、まさか…」

「あぁ、あいつ…」

…何も言わず、行きやがった。

あいつが行く先と言ったら、一つしかない。

「…追いかけなきゃ」

「あぁ」

あいつ一人に、全部押し付ける訳にはいかない。

「ちょっと待ってて。イレースちゃん呼ぶから」

シルナは、分身を動かし、別室で授業をしているであろうイレースに。

至急学院長室に来るよう、伝言を託した。

こういうとき、校内にうようよいるシルナ分身は便利だ。

五分と待たず、イレースがやって来た。

「何事ですか、いきなり」

「イレースちゃん…。ナジュ君が、いなくなった」

「…!」

イレースも、気づいたようだ。

ナジュが俺達に黙って、行き先も告げずに行くところと言ったら、一つしかない。

「まさか…。『カタストロフィ』のリーダーのもとに…」

「…だろうな」

自分一人で、けじめをつけるつもりなのだ。

あの死にたがりめ。

自分が不死身だからって。

「…『カタストロフィ』のリーダーは、私を憎んでる」

シルナは、そう呟いた。
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