神殺しのクロノスタシス2
「…あなたがイーニシュフェルトの里の出身だなんて、初めて知りましたよ」

それも、族長の孫娘だなんて。

「私も、他者にこれを話すのは初めてだ」

あぁそうですか。

あなたの初めて、もらっちゃって済みません。

「で?僕に何が言いたいんですか?僕に何を期待してるんですか」

実はお前、良いように利用してたんだぜバーカ、と嘲笑いたかったのか。

それとも…。

「心を読んで、もう分かってるんじゃないのか」

「もう読んでませんよ」

馬鹿らしくて、もう心を読むのも面倒になった。

「ならば、私は改めて、お前を『カタストロフィ』に勧誘する」

「…あ?」

「これで分かったろう。私は、お前の望みを叶えてやれる」

…はぁ。

そう来たか。

「あなた、さっきまで僕のこと一方的に利用して、散々ざまぁって草生やしていたのに」

まるで、それがなかったことのように。

どの口で、そんなこと言ってんだ?

「さっきまで僕、一方的に利用されてたんですけど。その上で、また利用させてくれって頼むんですか?」

常識的に考えて、まず断るだろうということが分からないのか?

分からないほどノータリンなのか?

「そうだ」

やっぱりノータリンだった。

「僕にもプライドってものがあるんで」

「断る気か?」

「だって、僕に何のメリットがあるんですか」

「お前の悲願を叶えてやれる」

「…あぁ…」

そう。そういうこと。

だって、あんたも出来るんだったね。

神殺しの魔法。

それを使えば、きっと僕を殺せるね。

それは…大変魅力的な誘惑だね。
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