神殺しのクロノスタシス2
「そんな訳なので、僕はシルナ・エインリーの手口にどっぷりと嵌まり、完全に彼らの仲間になっちゃったんで、あなたと取引は出来ません」

「…愚か者めが」

「それは生まれつきです」

愚かでも、良いじゃないか。

ちょっと無様な人生の方が、後で振り返ったとき、充実してたように思えるもんだよ。

順風満帆な人生ほど、つまらないものはない。

そう思わないか?

「ならば、もう貴様に用はない」

「いや、そうは行かないんですよ」

僕は風魔法を飛ばし、出ていこうとするヴァルシーナを止めた。

「あなたに用がなくても、僕はあるんで」

「何の用事だ?」

「あなたを殺す」

贖罪のつもりか。

僕が殺してしまった人に対する、罪悪感の結果なのか。

それとも、シルナ・エインリー以下、僕に許しを与えてくれた人々への、恩返しなのか。

死にたがりの人生から、完全に脱却する為か。

まぁ、理由なんて何でも良い。

とにかく、僕は。

「あなたを殺します」

「…笑わせるな」

「顔、笑ってませんよ?」

「貴様ごときに、殺される私ではないっ!」

ヴァルシーナは、僕に杖を向けた。

そうだ、逃げるな。

こちとら不死身なのだ。

刺し違えてでも、この女を殺す。

「…貴様が、私に殺される?本気で思っているのか」

「え?あぁ…。一応不死身なので、僕」

「成程。何をされても自分は死なない。そうたかを括っている訳か」

「はい」

僕、正直者なので。

「ならば良いだろう。イーニシュフェルトの里の魔法がどんなものか、お前に教えてやる」

「…?」

ヴァルシーナが杖を振った、その瞬間。






僕は、何もない真っ白な空間に飛ばされた。



< 561 / 742 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop