神殺しのクロノスタシス2

side羽久

─────…ナジュが一人で行くとしたら、ここしかない。

そう思って、俺とシルナは、かつて『カタストロフィ』のアジトがあった異空間にやって来た。

と、同時に。

シルナが、ナジュの風の刃で、首を吹き飛ばされそうになってた。

「あぁぁぁ危なっ!!」

突然過ぎる奇襲に、シルナは腰を抜かして、かろうじて避けた。

本当危なかったな、お前。

避けてなかったら、今頃、シルナの首が美しく宙を舞ってたところだぞ。

「いきなり何するのナジュ君!びっくりしたでしょ!」

「あれ…?リリス…。学院長…?」

「…?」

リリス?

「…あ、そっか。リリスじゃ効果がないと思って、今度は学院長を…」

「え?いやナジュ君、君さっきから何言って、」

「学院長なんて、リリスに比べたら何のダメージもないから、余裕ですね」

「なんかいきなり襲われてるし、酷いことも言われてる気がする!羽久助けてーっ!」

いやぁ。

なんか面白いから、しばらくこのままで良いんじゃないかな。

「この幻学院長は、よく逃げますね…。原作再現…?」

「ちょっとちょっとナジュ君!何言ってるの!?大丈夫!?」

襲い掛かるナジュの猛追を、必死に避けながら叫ぶシルナ。

何だろう。

めっちゃ面白い。

「ん…?なんか様子がおかし…、あれ?学院長?」

「え?」

「あなた、もしかして本物の学院長?」

「もしかしてって何!?私分身じゃないよ!本物の学院長だよ!」

「えっ。本物…。これ本物なんですか?僕の知ってる、腰抜けで間抜けで摘まみ食い大好きで食い意地が張ってて、中年の癖に若手イケメン教師に張り合って見事に負けた、本物のシルナ・エインリーなんですか?」

「認めたくなくて仕方ないけど、でも本物のシルナ・エインリーだよ!」

シルナ、涙目。

何一つ言い返すことが出来ない。何故なら真実だから。

俺も…そう思うぞ、ナジュ。
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