神殺しのクロノスタシス2
「くそっ…。くそっ、くそがっ!」
「…」
ヴァルシーナは、続けざまに私に攻撃を打ち込んできた。
私はそれを冷静に避け、かつ弾き飛ばし、いなしていった。
それほど難しいことではない。
時魔法を使う羽久や、読心魔法を使うナジュ君の方が、余程怖い。
ヴァルシーナは確かに天才だ。イーニシュフェルトの名に恥じない、素晴らしい逸材だ。
けれど。
「…君では、私を殺せないよ」
「ぐあっ!」
私は、ヴァルシーナの背後に回り込み、光魔法を飛ばした。
まともに食らったヴァルシーナは、地面に土下座でもするように、杖を落として突っ伏した。
「…何故あのとき、私が神殺しの魔法の使い手に選ばれたのか…分かるかい?」
「ぐっ…」
ヴァルシーナはそれでも諦めず、立ち上がって杖を握った。
「それは、私が一番の『適役』だったからだ…。君以上にね」
「…!黙れっ!」
彼女の放った攻撃を、簡単に相殺する。
ヴァルシーナは、確かに天才だ。
でも。
私が育て、私を慕ってくれる彼らほど、多才ではない。
ヴァルシーナは、ずっと私に対する復讐だけを考えて生きてきた。
かつて私が、邪神を殺める方法を必死に模索していたときと同じ。
君は、昔の私に似ている。
だから分かるんだ。
君は私に勝てない。
復讐で頭をいっぱいにして、周りが全く見えてない。
かつて私がそうだったから、よく分かる。
駄目なんだよ、ヴァルシーナ。
「私は正しい。私はイーニシュフェルトの里の、正統な後継者で…!使命を果たす為に…!」
「そうだね」
私がまだあの頃の私だったとしたら。
きっと君と一緒に、邪神を消す方法を考えただろうね。
でも私は、出会ってしまった。
私は愛を知った。
だから、もう戻れない。
この愛という感情は、不思議なものだね。
君には、まだ分からないかもしれないけれど。
愛を知り、初めて私は、目の前が開けたのだ。
…だから。
「盲目の君に、私は殺せない」
想定外の事態が起きたのは、その時だった。
私が気絶させた羽久が、よろよろと起き上がった。
そんな、まさか。
これほど早く目を覚ますなんて。
最低でも半日は眠っていられるように、威力を調整したはず。
しかし。
私は、失念していた。
「…」
その子は、子供がするように、きょろきょろと辺りを見渡した。
まさか、このタイミングで。
「…しーちゃん」
羽久じゃない。
羽久は、確かに眠らせた。
代わりに。
二十音の方が、目を覚ましてしまった。
これは、さすがに想定外だった。
「死ねっ…!死ねっ!死ねっ!この裏切り者がぁっ!」
「ちょっ、ヴァルシーナちゃん、今は」
ヴァルシーナは、二十音が目覚めたことに全く気づいていなかった。
それだけ頭に血が上っているのだろうが、しかしこの状況は最悪だ。
と言うか、
「貴様が…!そんな軽々しく、私を呼ぶなぁっ!」
むしろ怒らせてしまった。
違うんだ、そうじゃなくて、私が言いたいのは、
「…しーちゃん。の、敵」
二十音の、ぼんやりとした目が、ぎらりと覚醒した。
「…」
ヴァルシーナは、続けざまに私に攻撃を打ち込んできた。
私はそれを冷静に避け、かつ弾き飛ばし、いなしていった。
それほど難しいことではない。
時魔法を使う羽久や、読心魔法を使うナジュ君の方が、余程怖い。
ヴァルシーナは確かに天才だ。イーニシュフェルトの名に恥じない、素晴らしい逸材だ。
けれど。
「…君では、私を殺せないよ」
「ぐあっ!」
私は、ヴァルシーナの背後に回り込み、光魔法を飛ばした。
まともに食らったヴァルシーナは、地面に土下座でもするように、杖を落として突っ伏した。
「…何故あのとき、私が神殺しの魔法の使い手に選ばれたのか…分かるかい?」
「ぐっ…」
ヴァルシーナはそれでも諦めず、立ち上がって杖を握った。
「それは、私が一番の『適役』だったからだ…。君以上にね」
「…!黙れっ!」
彼女の放った攻撃を、簡単に相殺する。
ヴァルシーナは、確かに天才だ。
でも。
私が育て、私を慕ってくれる彼らほど、多才ではない。
ヴァルシーナは、ずっと私に対する復讐だけを考えて生きてきた。
かつて私が、邪神を殺める方法を必死に模索していたときと同じ。
君は、昔の私に似ている。
だから分かるんだ。
君は私に勝てない。
復讐で頭をいっぱいにして、周りが全く見えてない。
かつて私がそうだったから、よく分かる。
駄目なんだよ、ヴァルシーナ。
「私は正しい。私はイーニシュフェルトの里の、正統な後継者で…!使命を果たす為に…!」
「そうだね」
私がまだあの頃の私だったとしたら。
きっと君と一緒に、邪神を消す方法を考えただろうね。
でも私は、出会ってしまった。
私は愛を知った。
だから、もう戻れない。
この愛という感情は、不思議なものだね。
君には、まだ分からないかもしれないけれど。
愛を知り、初めて私は、目の前が開けたのだ。
…だから。
「盲目の君に、私は殺せない」
想定外の事態が起きたのは、その時だった。
私が気絶させた羽久が、よろよろと起き上がった。
そんな、まさか。
これほど早く目を覚ますなんて。
最低でも半日は眠っていられるように、威力を調整したはず。
しかし。
私は、失念していた。
「…」
その子は、子供がするように、きょろきょろと辺りを見渡した。
まさか、このタイミングで。
「…しーちゃん」
羽久じゃない。
羽久は、確かに眠らせた。
代わりに。
二十音の方が、目を覚ましてしまった。
これは、さすがに想定外だった。
「死ねっ…!死ねっ!死ねっ!この裏切り者がぁっ!」
「ちょっ、ヴァルシーナちゃん、今は」
ヴァルシーナは、二十音が目覚めたことに全く気づいていなかった。
それだけ頭に血が上っているのだろうが、しかしこの状況は最悪だ。
と言うか、
「貴様が…!そんな軽々しく、私を呼ぶなぁっ!」
むしろ怒らせてしまった。
違うんだ、そうじゃなくて、私が言いたいのは、
「…しーちゃん。の、敵」
二十音の、ぼんやりとした目が、ぎらりと覚醒した。