神殺しのクロノスタシス2
「ナジュ君。ルーデュニア聖王国全ての魔導学院の、新任魔導教師合宿の案内が来てるんだけど、行く?」

「却下します」

即答だった。

まぁ、ナジュならそう言うとは思ってたが。

本当に即答だった。

「えぇ~!?行こうよー」

懇願するシルナ。

「嫌です。最近ようやく小腸と大腸が繋がって、はみ出てた脳みそも頭の中に収まったのに、これ以上僕に何をさせようってんですか」

深刻な問題だな、それは。

最近、ようやく帽子が取れたナジュである。

「新任研修!全国の新任魔導教師が集まって、合宿するの。魔導教育法の勉強とか、教え方のコツとか、ベテラン教師に教えてもらうんだよ」

「嫌ですよ。僕には僕の教え方があるんです。他人の意見には惑わされません。我が道をひたすら、真っ直ぐに進みます」

なんか良いこと言ってるように聞こえるけど。

要するに、合宿なんて面倒臭いから行かない、と言いたい訳だ。

「お願いだよ~。行ってよ~」

すがりつくシルナ。

「何でそんなに頼むんです?別に行っても行かなくても、学院長には関係ないでしょ」

「それが、関係あるんだよ」

俺は、パンフレットの一ページを指差した。

書いてあるだろ?下の方に。

『なお、この研修を受けた教員の所属する学院は、国の魔導教育法補助金の対象となります』って。

要するに、だ。

ナジュがこの研修を受けてくれたら、万年火の車状態で営業してる我がイーニシュフェルト魔導学院に、小金が入ってくる訳だ。

「うわ、きたなっ…。金の為に僕を差し出すとか、やることきたなっ…」

ドン引きのナジュ。

まぁ、そう言ってやるなよ。

学院がお財布に困ってるのは、紛れもない事実なのだから。

国がちょっとばかりでも援助してくれるなら、それに越したことはないのだ。
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