神殺しのクロノスタシス2
「それにほら、ナジュ君は、教師としての訓練とか勉強とか、何もしてないでしょ?」

まぁ、そういえば。

そうだな。

これを機に、教師の何たるかを教えてもらうのも良いかもしれない。

「羽久さんまで、そんなこと言って…」

言ってねぇし。

お前が勝手に読んだだけだし。

「合宿って、ちなみに何日間なんですか?」

「二週間だね」

「なっが…。僕は僅かな金と、イーニシュフェルト魔導学院の教師というちっぽけな名誉の為に、人身御供として二週間も監禁されるんですね」

人聞きが悪過ぎる。

その通りではあるのだけど、言い方が。

「ふん、良いですよ別に。学院長のおやつ代を稼いでくれば良いんでしょ」

超不貞腐れてるナジュ・アンブローシア。

学院長のおやつ代…か。

間違ってはいない。

「今日はやけに素直だな、ナジュ」

いつもなら、行かないと言ったら絶対行かないのに。

「あぁ、この間学院長が隠してる秘蔵のお菓子を摘まんでみたら、思いの外美味しくて、全部食べちゃったんで。そのお詫びも兼ねて」

「えぇぇぇ!?まさかそんな!あの隠し場所がバレてる!?」

シルナは、慌ててデスクの下に潜り込んだ。

そんなところに隠してたの?お前。

めっちゃバレやすいじゃん。

あと、ナジュ相手に隠し事は無理だから。

「なんてことを!あれ高かったんだよ!数量限定で!予約しないと買えなくて!物凄く美味しいって有名で!あれを全部食べちゃったの!?」

「全部、僕の左脳になりました」

「~っ!!」

まぁ、シルナに食べられるより…ナジュの左脳になった方が…有効的ではある。

シルナには申し訳ないが。

「もーナジュ君とは口利かないから!合宿行ってもらうから!そんな悪い子は合宿研修行って、良い子になるまで帰ってきちゃ駄目なんだからね!」

お気に入りのおやつを全部ナジュに取られ、半泣きのシルナ。

「わっかりました~。それじゃ、このナジュ・アンブローシア、今から合宿行ってきま~す」

「おぉ…。達者でな」

こうして。

ナジュは、イーニシュフェルト魔導学院を、しばしの間ではあるが、後にした。

そしてそのせいで、えらい厄介なことが持ち上がったのである。
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