神殺しのクロノスタシス2
…で。

肝心なところを、まだ何も聞いてない。

「お前、名前は?」

「令月(れいげつ)。令月・スタングラーク」

令月か。

吐月と名前被ってんじゃん。

まぁ、そんなことはどうでも良い。

「歳は?」

「今年で14歳になった」

「…ふーん…」

14歳で、エクトルから王都に来たと。

しかも、徒歩で。

色々考えられるが…。

家族で旅行に来たけど、はぐれちゃったとか。

本当は列車に乗る予定だったのに、チケットなくしたとか。

「どうしたの?家出?」

シルナが、心配そうに尋ねた。

もしこの少年が、家出してここまで来たのなら。

この令月という少年、めちゃくちゃ肝が据わってるな。

普通、エクトルから徒歩でセレーナまで行こうなんて思わないもん。

まぁ、14歳と言えば、家出したくなる歳ではあるが…。

「あ?まぁ家出と言えば家出なんだけど」

家出なのかよ。

え?まさか本当に?

「ち、ちょっと詳しく話してくれる?親御さんは?連絡取れるの?」

さすがのシルナも、慌て気味。

本当に家出してきたのなら、今頃少年の家族は、総出で探し回ってるだろうに。

それともこの子の家族は、この子がいなくなっても何とも思わない人物なのか?

「えぇと…。詳しく話そうと思ったら、あれはまだ僕が生後半日のとき…」

そこから?

詳しく話してとは言ったけど、そこから始めるの?

そして何でお前は、生後一年の記憶があるんだよ。

人伝に聞いたのだろうか?お前はこんな子だったんだよ、って。

でなきゃ、覚えてるはずがない。

「家出してきたこと、親御さんは知ってるの?」

「うん、多分」

多分ってお前。

「ここ最近姿が見えないから、いなくなったことには気づいてるかもしれないけど…」

と、令月少年。

…見たところ、あまり良い家庭環境で育っていないようだ。

普通子供が家出したら、一日二日ならともかく。

三日目には、焦って探し始めるだろう。

それなのに…。

「そうだったんだ…。可哀想にね」

涙目で同情するシルナ。

しかし。

「あ、親は悪くないんで。僕が悪いんだ」

は?

「実は、家から自分で出てきたって言うより、学校から追い出されたんだよね」

…はぁ?

ちょっと、よく分からなくなってきた。
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