神殺しのクロノスタシス2
来賓挨拶。

在校生代表による送辞。

ここまでは、涙ぐみながら何とか耐えていたシルナ。

しかし。

卒業生代表による答辞で、大号泣。

しんみりとした空気が、シルナの小さな嗚咽のせいで、台無しである。

お前、もう生徒の言葉、聞いてないだろ。

顔めちゃくちゃになってるぞ。

そして、そのときがやって来た。

学院長式辞である。

シルナは、ぐすぐす言いながら壇上に上がり。

「ひっく…ひっく…」

泣くのに夢中で、何にも言えてない。

式辞を書いた紙が、涙でしわくちゃ。

あれじゃ読めないだろうに、そもそも泣き過ぎて言葉を発せてない。

で、5分くらい壇上で泣きじゃくって、講堂にいる全員が、「こいつ大丈夫か…?」と思い始めた頃。

シルナはマイクを掴んで、ぐっちゃぐちゃの顔で。

「び、びんなっ…。そづぎょう…おべでどうっ…!」

ちょっと何言ってんのか分かんないですね。

「い、いーにじゅふぇるとのことは、わ、わずれでも良いから…!シルナのことは、わずれないれねっ…!」

逆逆。

シルナのことを忘れて、イーニシュフェルトの方を覚えててもらえよ。

「わらしはわずれないからねっ…!」

そりゃお前はそうだろうよ。

「元気れ…。元気れねっ…!元気れっ…!ひっく。元気れねぇっ…!」

まずお前の健康が一番心配だよ、と一同が思ったところで。

「ひっく…。ひっく…」

シルナはそれだけ言って、式辞の紙をぐっしゃぐしゃに握り締めて、泣きながら壇上を降りた。

おい。言うことはそれだけか。

もう耐久限界らしい。

とにかく、これで学院長の式辞も終わり。

卒業生達は、大きな拍手と、シルナの泣き声に見送られて、六年間学んだ学舎を後にした。
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