神殺しのクロノスタシス2
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第三部3章 (5/39)
一瞬にして。
本棚が砕け散り、何なら向こうの壁も貫通して、青々とした空が見えた。
「…あ、済みません」
人の部屋を勝手に破壊しておいて、謝り方がめちゃくちゃ軽かった。
しかし、今はそれどころではない。
「何なの君、大丈夫!?」
シルナもびっくり。
俺も同じ気持ちである。
何なの、お前。
「魔導適性、ないんじゃなかったの!?」
「あ、うん…。炎出したり、水とか氷とかは出来ないよ」
「でも今君、魔法使ったよね!?」
「今のこれ、魔法なの?この本、読んだのやってみただけなのに」
無意識?
無意識なのか?
無意識に使ったのか?
ともあれ。
今のは、力魔法以外の何物でもない。
皮肉なことに、令月には。
間違いなく、魔導適性が備わっている。
たった今、壁を破壊したのが何よりの証拠である。
令月はアトラスみたいな、頭の中まで筋肉隆々の、逞しい体格の持ち主ではない。
小柄で、いかにも非力そうで、すばしっこくはあるけど、およそ戦いには向いていないであろう身体で。
本当に、何なんだこの少年は?
とりあえず。
本人が、「僕何かしました?」みたいな顔をしているのが、凄く腹立つ。
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