神殺しのクロノスタシス2
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第三部3章 (7/39)
こうなってはもう、ただの学院の雑用係にはしていられない。
「令月君。君、うちの学院に生徒として編入学しない?」
ここぞとばかりに、シルナはそう提案した。
こんな才能の塊を、ただの小間使いにしておくには、あまりにも惜しい。
是非とも魔導の基礎を学び、更にその力魔法をパワーアップさせてやりたい。
「でも、僕お金ないよ?学費とか払えない」
「実家に言ってみろ。『イーニシュフェルト魔導学院に入学させてもらえるらしいから、学費送って』って」
きっと目の色変えて、猫なで声ですり寄ってくるだろう。
イーニシュフェルトと言えば、ラミッドフルスに並ぶ、最高峰の魔導学院。
そこに、学院長自らの勧めで編入学させてもらえるのだから。
令月の実家も、白々しくすり寄ってくるに決まってる。
自分等が追い出した癖にな。
皮肉なもんだ。
しかし。
「いや、実家とはもう関り合いになりたくないから」
令月は、きっぱりと実家の援助を断った。
まぁ、無理もないか。
あんな風に追い出されたのに、今更態度を変えられてもウザいだけだ。
だが、心配は要らない。
うちの学院長なら。
「学費のことなら、心配しなくて大丈夫だよ」
ほら、見たことか。
「君ほどの才能なら、学費免除生徒の対象になる。学費のことは心配しないで」
「でも、教科書代とか、入学費とか滞在費とか」
「ぜ~んぶ含めて免除」
「へー」
な?
うちの学院長、こんなだから。
イレースが、学院の懐事情に頭を抱える訳だよ。
こうやって、才能のある生徒は、すぐに学費免除にしてしまうんだから。
「なんか大盤振る舞いだね。僕、良いの?生徒になって。小間使いで充分なのに」
「お前みたいな才能の塊を、小間使いにしておくのは勿体ないんだよ」
シルナが、絶対見逃すはずがない。
見てみろ。新たなる生徒の可能性に期待するあまり。
自分の部屋が本棚ごと破壊されたことさえ、忘れているようだ。
あれの修繕費、お前の財布から出せよシルナ。
「じゃあ、これからは生徒として宜しく」
「こちらこそ。イーニシュフェルト魔導学院にようこそ、令月君」
こうして。
イーニシュフェルト魔導学院には、新たなる期待の生徒が編入学してきた。
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