神殺しのクロノスタシス2
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第三部3章 (10/39)
「何やってるの学院長。こんなところでこそこそして」
俺がシルナを眺めていると、そこに新一年生がやって来た。
「あぁ、令月…。学校はどうだ?もう慣れたか」
「うん、多少は。授業は全然分からないけど」
「そうか」
まぁ、いずれ慣れるだろう。
あと、タメ語なのは変わらないんだな。
俺は別に構わないけど。
「で、学院長は何してるの?」
「クリスマスパーティーの準備なんだってさ」
「…クリスマス…」
クリスマスは、三日後に迫っている。
今年は『カタストロフィ』とのいざこざもあり、準備が遅れてしまった。
いつもなら、11月の時点でクリスマスツリーを用意するんだがな。
もうクリスマスは目前なんだから、今更ツリーなんか飾ったって、しょうがないじゃないかと言ったんだが。
「やだ!ツリーのないクリスマスパーティーなんてやだ!」という、幼稚園児並みの、頭悪そうな返事が返ってきた。
「ふーん…。クリスマスパーティー…」
「全生徒が参加するんだぞ」
「え?」
一年生なら、知らなくて当然だな。
「玄関にでっかいツリー飾って、学院長が自腹切って、全生徒にクリスマスプレゼントを配るんだよ」
「…クリスマス…プレゼント…」
「そう。アホらしいだろ?」
未だにサンタクロースを信じてる子供みたいだ。
まぁ、プレゼントと言っても、ほぼお菓子なんだけどな。
プレゼントを配って、講堂で讃美歌を歌って。
校舎内をクリスマス仕様に飾り付け。
食堂では、特別にクリスマス用のチキンと、クリスマスケーキが用意される。
ちなみにここまで、全部シルナの自腹。
イレース曰く、「そんなことの為に貴重な予算を使えません」とのこと。
全く以てその通り。
しかしシルナは、例え自腹を切ってでも、クリスマスパーティーをしたいらしい。
見てみろ。このシルナの、嬉しそうな顔を。
「こっちの飾りはここにつけて…。あっ、見ててっぺんの星が出てきたよ!」
良い歳したおっさんが、クリスマスツリーの星で喜んでる。
世も末だな。
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