神殺しのクロノスタシス2

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 第三部3章 (12/39)

そして、クリスマス当日。

校内は、シルナ(と、その分身)が、クリスマス仕様に飾り付けてある。

「すご…。あちこちきんぴか…」

これには、令月もびっくり。

正面玄関の、大きなクリスマスツリーだけではない。

学校内、全ての教室や廊下に、きらきらと光るイルミネーションが輝いていた。

廊下の電気なんて、点けなくて良い。

イルミネーションだけで、充分足元を照らしてくれる。

どんだけクリスマスに力入れてるんだと思うかもしれないが。

うちの学院長の趣味なんだよ。許してやってくれ。

イレースは、「電気代の無駄」と吐き捨てるが。

毎年、新入生は驚き。

二年生以上の生徒は、「今年も綺麗だなぁ」と感嘆して歩く。

まぁ、イーニシュフェルトの毎年恒例行事ってことで。

元々イベント好きだからな、シルナは。

ここ最近、色んな血生臭い事件もあったし。

ここいらで、日常を謳歌したいものだ。

生徒達にとってもなな。

そういう意味では、研修の為にクリスマスに参加出来なかったナジュは、ちょっと可哀想だな。

まぁ、あいつは日頃の行いが悪かったということで。

「皆~。クリスマスだよー。チキンあるよーサンドイッチも!クリスマスケーキもあるからね~」

生徒達を食堂に集め、満面笑みのシルナ。

誰よりもクリスマスを謳歌してるな。

「皆、ケーキどれが良い?ショートケーキ、チョコケーキ、チーズケーキ、各種取り揃えてるよ!」

そして、無駄にクリスマスケーキの種類が多い。

「えっ、抹茶味?抹茶苦いから用意してないよ!」

しかし、好みが物凄くシルナ寄り。

良いか、世の中にはな、お前みたいに甘々なケーキが好きな人間ばかりじゃないんだ。

甘いのが苦手な人もいるんだよ。分かれ。

ごめんな、甘いものが苦手な生徒。

しかし、そこはイレースが、抜かりなく対応していた。

「甘いものが苦手な生徒、及び乳製品にアレルギーのある生徒はこちらに」

甘さ控えめのケーキ、及びアレルギー対応のケーキが、用意されていた。

さすがイレースである。

「はいはい、羽久と令月君の分もあるよ~どれにする?」

シルナは、超嬉しそうにアソートケーキを持ってきた。

令月はともかく、俺は教師陣なんだから要らないっての。

「ケーキ。どれにする?」

「…ケーキ…」

令月は、目の前に出された各種ケーキに、戸惑っているようだった。

そりゃあ、学院長自らケーキを選べと言われたら、困惑するのも分かる。

普通の魔導学院だったら、まずこんなことはないだろうし。

ってか魔導学院じゃなくても、普通の学校はここまでクリスマスに力入れないって。

「えっと…。僕、これ、選んで良いの?」

「良いよ。好きなのどうぞ」

「どれが…一番美味しいのかな…」

「私のおすすめはチョコケーキ!やっぱりチョコケーキが一番だよ美味しくてさいこ、」

「じゃあ俺がチョコケーキもらっとくよ」

「羽久ぇぇぇ私の分は残しておいてぇぇぇ!」

涙目やめろ。

嘘だよ。生徒が選び終わってないのに、先に教師が選ぶ訳ないだろ。

「令月。どれが良い?好きなの選べよ」

「…美味しいのなら、じゃあ、チョコの奴にする」

「そうか」

じゃあ、そうすれば良いさ。

令月は、チョコケーキの上に乗っているイチゴを、ぱくりと口に入れた。

「令月君。君はイチゴ先に食べる派なんだね」

「え、駄目なの?一番美味しそうだったから」

「駄目じゃないよ。好きに食べて良いから」

俺は…後に残す派かな。

まぁ、どっちでも良い。

令月の好きなように、クリスマスを堪能すれば良いのだ。





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