神殺しのクロノスタシス2
良いなぁ。

俺も出来ることなら、このおっさん無視して、生徒の二学期の成績表作りたいよ。

でも、両足がっちり掴まれて、泣いてすがってくるんだから、逃げようもない。

誰でも良い。

誰か助けて。

と、思っていると。

「…呼んだ?」

「うわっ」

背後から、誰かの声がしたと思ったら。

振り返ると、そこには令月がいた。

気配のない奴だな、お前は。

そう、令月。

他の生徒は、各々実家に帰ったが。

帰るべき家を持たない令月だけは、冬休みでも学生寮に閉じ籠っているのである。

「ほらシルナ、お前の大好きな生徒がいるぞ」

「え!本当に!?」

がばっ、と起き上がるシルナ。

餌の匂いを嗅ぎ付けた犬のようである。

「うわぁぁ令月君だぁぁ。君だけでもいてくれて嬉しいよぅ」

「それは良かったね」

すりすりしているシルナ。

良かったなシルナ。令月がいて。

すると、そこに。

「令月君。皆で大晦日パーティーしよ。皆で大晦日パーティーしようよぅ」

大晦日って、パーティーするっけ?

精々年越し蕎麦食って終わりだろ。

イレースなんか、年末だろうが関係なしとばかりに。

むしろ普段の授業がなくなって、事務仕事に精を出せるとか言って、てきぱき仕事してるぞ。

「よし!忘年会しよう!令月君も一緒に忘年会しようよ!」

「僕、まだ今年を忘れたくないんだけどな」

「やろうよぉぉ。人数は多ければ多いほど良い。私の分身も呼んでくるから!」

自分の分身を頭数に入れるな。

むしろ惨めなのでは?

…と、思っていたそのとき。

「帰ってきちゃうんですよねぇ、僕が」

「あ!ナジュ君!」

懐かしい顔が、イーニシュフェルト魔導学院に帰ってきた。
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