神殺しのクロノスタシス2

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 第三部3章 (23/39)

「黄身が!美味しい黄身が!何としても救い出さなくては!スープに混ざっちゃったら勿体な、あぁもうナジュ君の馬鹿馬鹿馬鹿!」

「ふははは」

あわてふためき、スープに溢れ落ちる卵の黄身を掬い取ろうと、レンゲで必死に卵を守るシルナ。

を、眺めて愉悦に浸るナジュ。

もう良いじゃん。絡めてそのまま食えよ。

俺は自分の卵を死守する。

「全く…。年越し蕎麦くらい、ゆっくり食べさせてもらえないものですかね」

イレースは、早々に卵を潰し、黄身と蕎麦を絡めて食べていた。

イレースは潰す派なんだな。

まぁどっちでも良いけど。

「反対、反対、はんたーい!唐揚げに勝手にレモンかけるのはんたーい!」

「唐揚げにレモンはかけてませんよ。学院長の卵の黄身を潰しただけで。それにこうした方が美味しいかなぁっていう。可愛い後輩の配慮です」

嘘つけ。

悪気と悪意しかなかっただろうが。

「酷いよナジュ君。君の血は何色だ」

半泣きで、潰れた卵に蕎麦を絡めて食べるシルナ。

すると。

「あれ…?意外と美味しい…?」

何かに目覚めた様子。

お前の卵の黄身への思いは、所詮そんなもんだったのか。

「ね?美味しいでしょう?」

「ぐぬぬ…。確かに、悪くない…。来年から悩むことになるね、これは」

心底どうでも良いわ。

それより。

「令月も食べろよ。冷めるぞ」

「あ…うん」

今日初めて食べるみたいな顔で。

令月は、年越し蕎麦を啜った。

まぁ、こんな年末も悪くないだろう。





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