神殺しのクロノスタシス2
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第三部3章 (37/39)
さて、いざ始まったマラソン大会。
イレースは、一定の速度を維持したまま、肩を揺らして走っていた。
プロだ。
マラソンのプロだ。
ラミッドフルスでも、一緒に走ってたんだろうなぁ。
鞭が飛んでこないだけマシ。
そういえば、ナジュは大丈夫だろうか。
ホイッスルが鳴るなり、「じゃ、僕ウサギタイプなんで」と言うなり、全力疾走で走っていった。
ウサギタイプなのは良いが、前半であんなに飛ばして大丈夫なのか。
後半バテるぞ。
まぁ、好きにすれば良いけど。
で、後方では。
「ま、待って…。み。皆走るのっ、はや…」
早くもバテ始めている学院長(中年)。
辛いか。だろうな。
身体の節々に年齢を感じる歳だもんな。
「は、はつ、羽久が、私にっ…しつ、失礼なことを、考えっ、てる気がするっ…」
「それだけ余裕があれば大丈夫だ」
すると。
「いちに、いちに、いちにっと…」
ロボットみたいな正確さで小走りする、令月を発見。
「よう、令月」
カウント止めて悪いな。
ちょっと時間もらうぞ。
「あ、どうも羽久さん」
「どうだ、ペースは」
「悪くないってところ」
そうか。
「足速いのか?令月は」
「足…人よりは速いと思うけど、長距離は得意じゃない」
へぇ。
息切れせずに返事が出来る辺り、結構走るの向いてるんだな。
まぁ、エクトルから王都へ辿り着いたことを思えば。
たかが10キロくらい、お散歩感覚だろうな。
「学院長は?」
「シルナか?シルナはもう知らん」
俺、あれだから。
「持久走一緒に走ろうね~」って言っときながら。
ゴール付近で突然の裏切りを見せるタイプだから。
皆も気を付けろよ。
「一定のペースで走るのが良いんだよ。前半で頑張り過ぎたら、後で苦しいし。後半に向けてペース上げた方が、僕は好きだな」
マジで?
「ナジュの奴、開幕ぶっ飛ばしてたけど大丈夫かな」
「そういう人もいるよ。開幕ぶっ飛ばして、その勢いのまま、多少疲れても、リードを取ってるからそのまま余裕持ってゴールする人」
「へぇ」
じゃあナジュは、そのタイプなのだろうか。
それとも、ウサギとカメみたいに、途中でぶっ倒れてるんだろうか。
まぁ、遥か後ろで既にカタツムリ速度で走ってるシルナよりは、速いだろうな。
「別に順位は頓着しないし。お互い頑張ろう」
「うん」
マラソンってのはな、誰が一番速いかを競うことが大事なんじゃない。
そりゃマラソン選手ともなれば、速さを競いもするんだろうけど。
学校行事の、単なるマラソン大会なんて。
順位は気にせず、自分のペースで走り。
そして走りきることが、何よりも大事なのである。
そんな訳だから、シルナ。
今週末までには、無事に帰ってこいよ。
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