神殺しのクロノスタシス2
最初の対戦は、相手が魔法適性のない生徒だから助かった。

でも、幸運は長くは続かない。

二ヶ月目の相手は、魔導適性を持つクラスメイトだった。

とは言っても、まともに魔導理論を学んだ訳ではないので。

イーニシュフェルト魔導学院の生徒と比べたら、足元どころか、足の指の先っちょくらいにしか及ばないのだが。

それでも、魔法が使える対戦相手というのは、僕にとっては、生身で戦車と戦えと言われているのと同じだった。

勝てると思うか?生身で戦車。

対する僕は、ナイフ一本と拳銃一つしかないのだから。

僕が絶望している横で、僕の対戦相手はガッツポーズをしていた。

それもそうだろう。

魔導適性のないクラスメイトなんて、最初の一ヶ月目でほとんどが死んだのだから。

二ヶ月目、僕の対戦相手を知ったとき、僕は喜んだだろうか。それとも嘆いただろうか。

よく覚えていない。

酷く狼狽えた記憶もない。

あぁそう、来るべきものが来た、という気持ちだったんじゃないかな。

これでようやく、醜い世界から解放されるのかと思うと、悪くないかもしれない気がした。でも。

対戦開始のホイッスルが鳴るなり。

僕は、目が覚めた。

いや、正確に言うとホイッスルの音じゃなくて。

僕の身体を焼く、炎の熱さに目が覚めた。

今までずっと、他人の血飛沫を見ても、何とも思わなかったのに。

痛みを伴って初めて、僕の中にある、生存欲求が目を覚ました。

熱い。痛い。殺される。

この人は、僕を殺そうとしている。

彼の杖は炎をまとっていて、彼は今度は、僕の頭を狙っていた。

杖を木刀代わりに、頭に炎の金槌を叩きつけるつもりだったんだろう。

でも、僕はその対戦相手の動きが、まるでスローモーションのように見えた。

この人、馬鹿なんじゃないかと思った。

折角魔法が使えるのなら、何で僕のナイフの攻撃範囲に入ってくるのか。

そんなに死にたいのなら。

僕は一瞬にして、クラスメイトの背後に回った。

そして、彼の背後に、ヘビのように絡み付き。

持っていたナイフで、彼の顎の下を、ナイフが埋没するほどの力を込めて、思いっきり刺し込んだ。

ぐぼっ、と変な音が聞こえた。

人が死んだ音だった。
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