神殺しのクロノスタシス2
相変わらず、僕に魔導適性は見られなかった。

翌月も翌々月も、僕の相手は魔法が使えるクラスメイトだった。

その度、「あぁ僕、今月で終わったな」と思うのに。

それなのに、僕は翌月も翌々月も生きていた。

不思議なことがあるものだ。

あのときは、ただ不思議だなぁと思っていたけど。

今になって考えると、彼らは暗殺の為の訓練を受けていたけれど。

魔法に関する訓練は、していなかった。

だから、彼らの魔法は、イーニシュフェルト魔導学院の生徒と比べ物にならないくらい、拙いものだったのだ。

そのせいだろう。

魔法も使えない癖に、僕が生き残れたのは。

僕は、クラスメイトの動きが、とてもゆっくり見えるのだ。

魔法の使えない僕は、ただ暗殺の為の訓練だけを受けていた。

どういうことか、今まで何の取り柄もなかった癖に。

僕は、人を殺す才能だけはあったようで。

素人なら、魔導師相手でも殺してしまえるのだ。

でも。

それも、長くは続かなかった。

月が変わる度、敵が強くなっていった。

それもそのはず。

彼らは蠱毒の最後の一匹になる為に、弛み無い努力と才能に恵まれた、精鋭達。

当然、魔導適性も備えている。

魔導適性もない、ただ人間の暗殺しか出来ない僕なんて、敵うはずがない。

案の定。

何回目かは覚えてないけど、僕は「選別試験」で死にかける羽目になった。

対戦相手は、学年でも一位二位を争う逸材。

僕に勝てる要素はなかった。

それに彼も、ここまで生き延びた以上、最後の一匹になってやると意気込んでいた。

生存本能。

僕達が、共通に持っていたものだ。

彼は、今までの拙い魔導師ではなかった。

僕がいくらすばしっこく間合いに入ろうとしても、彼は正確にそれを避け、攻撃の手を緩めない。

こうされると、僕に勝ち目はない。

拳銃を撃っても、あっさりとかわされるか、防御魔法で塞がれる。

どうしよう、と僕は思った。

でも、どうしようもなかった。

僕はあっさりと、対戦相手の前に転がされた。

あとは、とどめを刺されて終わり。

あぁ、僕はここで死ぬんだ、と思った。

これで、僕の糞みたいな人生は終わり。

ようやく来世ガチャに期待出来るよ。

今回はノーマルだったんだからさ。

来世は、SSRの人生だったら良いなぁ。

そう思って、目を閉じようとした、そのとき。

僕の生存欲求が、目を覚ました。
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