神殺しのクロノスタシス2
…最初から、変な人だと思っていた。

浮浪者を装って、あ、いやエクトルから王都まで歩いてきたのは本当なんだけど。

僕のアホみたいな作り話を信用し、しかも学院に置いてくれた。

まさかこんなにトントン拍子に、ターゲットに近づくことが出来るなんて思わなかった。

僕の予定では、まずイーニシュフェルト魔導学院に保護され、別の施設か何処かに送られ。

そのつてを辿って、あるいはイーニシュフェルトの生徒の一人に接触し。

徐々に徐々に、シルナ・エインリーとの距離を縮めていくつもりだった。

そうでもしなければ、この男の首は取れない。

僕はルーデュニア聖王国に来て、初めて自分のターゲットが何者であるかを知ったのだ。

ルーデュニア聖王国を守る、聖魔騎士団の創設者。

イーニシュフェルト魔導学院の創設者。

ルーデュニアの魔導界の第一人者。

噂によれば、伝説の魔導師とまで呼ばれているではないか。

成程、頭領がこの男の首を狙う訳だ。

女王であるフユリ・スイレンを狙う方が、まだ現実的だ。

我ながらの名演技で、運良くイーニシュフェルト魔導学院の生徒となったが。

それでもまだ、彼と僕との距離は遠い…、

…と、思っていたら、全然そうじゃなかった。
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