神殺しのクロノスタシス2
イレース・クローリアは、何事もないかのような顔をして、校舎から出てきた。

僕はこの瞬間、いつも思う。

まさかこの一分後に、自分の命が終わるなどとは思っていないだろうな、と。

でも、それが生きるってことなんだよ。

ターゲットが、僕の攻撃範囲に入った。

瞬間、僕は茂みから飛び出し、イレース・クローリアの首筋を…頸動脈を狙って切り裂こうとした。

しかし。

「…!?」

イレース・クローリアが驚いた顔をするのは、当然のことだ。

いきなり襲われたのだから、驚くのは当然だ。

でも、次の瞬間噴き出すはずの血。

それは、イレース・クローリアのものではなかった。

「あーいたたた…」

「な…なん、お前…」

ナジュ・アンブローシアだった。

ナジュ・アンブローシアは、ちぎれた右腕を、ひょいっと拾い。

それを、自分の右腕の切断面に当てた。

「ちょっと容赦なさ過ぎじゃないですかー?僕、腕もげたんですけど」

「あなたは、いくらでも再生するから良いでしょう」

「そりゃ再生はしますけど、痛いものは痛いんですよ?ねぇ…学院長先生」

「!?」

気がついたら。

背後に、シルナ・エインリーと、羽久・グラスフィアが立っていた。

まさか。まさかまさかまさか。

僕が暗殺者で、今夜イレース・クローリアの命を狙っていることを、事前に知って、

「知ってましたよ。あなたがここに来て、僕と目を合わせたその瞬間からね」

「!?」

そんな…馬鹿な。

僕は…ずっと彼らの手のひらの上で、踊らされていたのか?
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