神殺しのクロノスタシス2

side羽久

──────…敵ながら。

可哀想な気がしてくる。

最初は、俺もシルナもイレースも、彼をただの浮浪児だと思っていた。

令月の作り話に、あっさりと騙されていたのだ。

それがどうだ。

ナジュが研修から帰ってきて、

「そういや暗殺者が潜り込んでますけど、あれって放置で良いんですか?」なんて。

クッキーバリバリ食べながら聞かれて、俺達は度肝を抜かれた。

まさか、あの少年が、ジャマ王国『アメノミコト』からやって来た、暗殺者だなんて。

まぁ、そう考えると、ちょっと出き過ぎではあったかな。

ろくな魔導理論さえ知らないのに、力魔法だけ、異様に練度が桁違いだったし。

成程彼は、仮面を被って、シルナの命を狙いに来たのだ。

それさえ分かれば、あとは簡単。

定期的に、ナジュに監視してもらえば良い。

こればかりは、相手が悪いとしか言いようがない。

だってナジュが読心魔法を使えるなんて、イーニシュフェルトでも、知っているのはごく僅か。

おまけに、ナジュが学院の教師になったのは、つい最近のことなのだ。

ジャマ王国から急場で来た暗殺者が、知っているはずがない。

お陰で、こんな滑稽な事態になってしまった。
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