神殺しのクロノスタシス2
「僕と君達は、生きてる世界が違う。だから…こんな醜く汚れた僕に…生きる資格なんて、ないんだよ」

「…そう。で、君はそんな世界に戻りたいの?」

「戻りたい訳ないだろ!でも…僕にはそれしか出来ない。僕には、そんな生き方しか…」

「本当にそう思う?」

…しつこい。

「そう思うから言ってるんだ。僕は…君達と違って、下らない命なんだよ。どんなに必死に守ったって、あっという間に潰されてなくなる。君達みたいに、選ばれた人間じゃないんだから」

「君は、それで幸せなの?」

しつこい。しつこい。

「幸せな訳…ないだろ」

何でこんなこと聞くんだ。

何でこんな…僕の傷を抉るようなことを言うんだ。

これが僕に与えられた審判なのか?

「…幸せになりたいけど…色のある世界に…ずっといたいけど…」

出来ることなら、僕だってそっちに生まれたかった。

幸せに生まれて、幸せに育てられて、幸せな未来を描きたかった。

でも、僕にその資格はない。

権利すらなかった。

僕が生まれたのは、幸せとは程遠い場所だったのだから。

だからもう、来世にでも賭けるしかないじゃないか。

「…成程、分かった」

シルナ・エインリーは、不意に手を動かした。

杖を振り上げて、僕を処刑するのかと思ったが、違っていた。

彼は子供にでもするように、僕の頭にポン、と手を置いた。

「何が…分かったんだよ」

「君が泣いてる理由が」

…泣いてる?

僕が?

僕は指摘されて、初めて気がついた。

いつの間にか、枯れ果てたと思っていた涙が溢れていることに。

そして記憶にある限り、僕が涙を流したのは、これが初めてだった。
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