神殺しのクロノスタシス2
そんな、都合の良いことが許されるのなら。

その色彩に溢れた、幸せになれる世界にいることが、僕に許されるのなら。

「僕は…生きたい。生きて、幸せになりたい。ここに居たい。何の意味もなく生まれて、何も為せずに、まだ死にたくない…!」

人生で、初めて。

僕は、涙ながらに人に頼った。

そんなこと、一度もしたことなかったのに。

だって、誰に頼んでも意味がないと分かっていたから。

生きるも死ぬも自分で選べなくて、頼りに出来る人も、守ってくれる人もいなかったから。

何もかも、自分で何とかしなきゃならなかったから。

それなのに僕は、今、初めて他人に頼った。

死にたくないなんて言葉が、自分の口から出るなんて、思ってもみなかったのに。

そんな資格はない、はずなのに。

それなのに。

「うん、分かった」

夕飯のリクエストに応じるかのような、軽いノリで。

シルナ・エインリーは、笑顔で頷いた。

「やっと、本音で話してくれたね」

「だから、僕が全部通訳すれば簡単だったのに」

「それじゃ意味がないだろ。本人の口から言わなきゃ」

「そもそもあなたは子供なんだから、素直に大人を頼れば良いんです」

…この人達。

何を言ってるんだろう。

と言うか、僕が何を言ってるんだろう。

僕が今言ったことが何を意味するか、分からない僕ではなかった。
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