神殺しのクロノスタシス2
「ナジュ君、ただいまー」

「ただいまですー」

「ただいま~」

「お帰りなさい、先輩方」

新聞部の部室に、三人の先輩達が戻ってきた。

「学院長先生に取材は出来ましたか?」

「出来たよ!」

と、にっこり笑うベルカ部長。

へぇ。

アポイントもなしに突撃取材、しかも浮かれた部活動の一環の為に、学院長の貴重な時間を割くなんてとんでもない、と断られるかと思ったが。

意外とすんなり受けてくれたものだな。

シルナ・エインリー学院長は生徒に優しい、という情報は、本当だったらしい。

馬鹿みたいな話だがな。

「でも、途中で逃げられちゃったんだよー」

「そうそう。追いかけたんですけどねー」

「逃げ足だけは早いんですから」

…途中で逃げられた?

「忙しいからまた後で、って?」

「ううん。もう話したくない~って」

「顔真っ赤でしたもんね!」

「ああ見えて、可愛いところありますもんね~学院長先生!」

…。

ふーん。

どうやら、本当に学院長は、三人の取材から途中で逃げたらしい。

見たところ、疚しいことがあって逃げた訳ではないようだ。

それはそれは。

可愛いところがあろうがなかろうが、僕にとってはどうでも良い。

「…それで?良い情報は得られました?」

「それがね~、学院長、浮わついた話が全然なくて…」

「彼女も恋人も、ガールフレンドもいないし、いたこともないって!」

「嘘ですよね~。絶対一人くらいはいますよ。恥ずかしいから内緒にしてるんですよ」

…シルナ・エインリーの恋愛事情なんて、糞どうでも良いのだ。

どうせあの男が愛しているのは、ただ一人だけ。

他の何者でもない。

「さぁ、早速記事を書きましょう!」

「記事のタイトルは何にする?」

「『極秘!シルナ学院長の恋愛事情』とかどうです?」

極秘なのに、記事に書いて良いのか。

まぁ、好きにさせれば良い。

どうやら僕が見たところ、彼女達から得られる情報は少なそうだ。

…やっぱり、こんな回りくどい方法じゃ駄目か。







「…全く。使えない奴ばっかりですね」

だったら、別の方法を使うとしよう。

< 68 / 742 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop