神殺しのクロノスタシス2
「ん?今何か刺さっ…」

「くそっ!!」

僕は、刀を振り上げてナジュの右腕を斬り落とした。

間に合うか。間に合うか間に合うか。

どうか間に合ってくれ。

毒が心臓に回る前に、腕ごと切り落とせば、何とか命だけは助かる。

僕の判断ミスだ。油断し過ぎた。

あの毒に侵されて、生きていられた者を僕は知らない。

身体に冷や汗が流れた。

もし間に合ってなかったら、今にもナジュの全身から血が噴き出、

「…で話を戻しますけど、彼は召喚魔導師なんですよ。まぁ僕も似たようなものなんですけど」

何故話を戻す?

そんな状況じゃないぞ。腕斬られたの分かってないのか?

痛覚ってものがないのか、この男は。

「痛覚?ありますよ普通に。どうもさっきから腕がいた、あれ?いつの間にか腕取れてる。何で腕斬るんですか?痛いんですけど」

…。

…毒は?

「毒?あぁ、それでなんか身体ムズムズして…」

…。

「…あっ、痛っ。いたたたた、心臓痛いんですけどこれ。何の毒なんですか?」

「何の毒って…。『アメノミコト』でよく使われる、一滴触れただけで死に至る猛毒だけど…」

「それでこんなに痛いんですね。あー痛い。僕こんなに痛いの初めてかも」

…。

「何で生きてるの?」

腕、切り落としたからか?

間に合ったのか?心臓に回る前に。

いや、だとしたら心臓に痛みなど感じないはず。

心臓に痛みを感じているのなら、既に死んでいるはず…。

「しかも無駄に腕まで斬られたし。酷いことしますねあなた。僕だって腕斬られたら痛いんですよ」

多分誰でも、腕斬られたら痛いと思う。

と、言うか。

…何で生きてるの?

「全く。暗殺組織ってのは容赦ないんだから。僕不死身じゃなかったら死んでましたよ」

「…不死身…」

「あ、聞いてませんでした?実は僕、不死身なんです」

「…」

「不死身の魔物と契約、ってか融合してましてね。だから致死性の毒やなんかは無効で。腕も、ほら」

僕が切り落とした腕を、自分で拾って、切断面にくっつける。

あっという間に、腕が癒着。

「…」

…。

僕は無言で、毒針を飛ばした暗殺者に、とどめの一撃をドスリ、と突き刺した。

…それなら、そうと先に言ってよ。

僕の心配を返せ。

そんな、渾身のとどめの一撃だった。
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