神殺しのクロノスタシス2
僕に与えられた、これが罰なのか。

学院長が、僕に隠れていろと言った理由は、これだったのか…。

「…来てしまったんだね、令月君」

学院長は、悲しげにそう言った。

…済みません。

全然我慢出来なくて、僕。

「君には伝えないまま、事を終えたかったんだけど…」

「…今なら、まだ目を瞑ってやろう」

シルナ学院長の言葉を遮り。

かつての組織の長、頭領が僕の方を向いた。

「お前の裏切り、背信、反逆、目を瞑ってやろう。本来なら決して許さぬが、お前だけは許してやろう。これまでの労に報い、お前だけは許してやる」

「…」

「『アメノミコト』に戻れ。黒月(くろづき)令月」

その名前で呼ばれたとき。

僕は、走馬灯のようにこれまでの過去が蘇った。

冷たい汗が出て、身体が震えた。

怖い。

そう、僕は今、怖いと思っていた。

死ぬことが怖い?

いや、死ぬことなんて怖くはない。僕は死を恐れない。死ぬことなんて、怖いと思ったことは一度もない。

違う。そうじゃない。

「ぼ、僕は…」

「…それとも」

頭領の真っ黒な眼光が、僕の心臓を貫いた。

「縄で縛って連れ帰り、また一から躾け直されたいか?」

「…!!」

忘れていた、過去が。

いや。

「忘れるように暗示をかけられていた」過去が、走馬灯のように蘇った。

それは、僕が裏切り、逃げ出したときの為にかけられた「保険」だった。
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