神殺しのクロノスタシス2
私もまた、同じことをしたよ。

かつて、親に忌まれ疎まれ、座敷牢に閉じ込められていた子供を救い出し。

今ではどうだ、この子は神を宿す身になった。

令月君以上の大出世。

だから、喜ばないといけないんだろうね。

「たかが一枚のちり紙を、豚の餌を、これほどの逸材に育ててやったのだ。感謝こそされ、口出しされる謂れはない」

「…言い返す言葉もない、正論だね」

確かにその通りだ。

この男が令月君を買い、育てなければ、この子は今、この世にすらいなかった。

そう思えば、令月君の才能をここまで開花させたこの男は、令月君にとって恩人と言えるのかもしれない。

あぁそうだ。その通り。

でもな、一言言わせてもらおうか。

「…クズが」

お前の妄言は何もかも全て、令月君の意思によるものではない。

自分の都合の良いように言ってるだけで。

私は、二十音でなければいけなかった。

でもこの男は違う。

令月君じゃなくても良い。

同じ役目を果たすなら、令月君じゃなくても、他の誰かでも構わなかった癖に。

恐怖と痛みだけで繋がれた絆なんて、そんなものは、絆とは呼ばない。

「それとも、お前も欲しくなったか?その便利な…駒が」

「そうだね、私も欲しくなったよ。この子が…。令月君が」

「…面白い。では、本人に決めてもらおうではないか」

…何?
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