神殺しのクロノスタシス2
「それにしても上手いですね土下座。履歴書の特技のところに『土下座』って書いても良いレベルですよこれ」

「謝罪も大事ですからね。全く最近の若者はろくな謝り方も知らないんですから」

「ちょっとそこの教師二人!止めなさい!まず生徒が土下座してることを止めなさい!」

「だって学院長が言ったんじゃないですか。『生徒の長所は褒めて伸ばしましょう』って」

確かに。

「言ったけど!でも土下座が上手いのは長所ではないから!」

「いや分かりませんよ、世の中何が役に立つかなんて。将来お賽銭泥棒がバレたときとか、あまりにも綺麗な土下座で謝られたら、うっかり許してもらえるかもしれませんし」

「将来お賽銭泥棒する前提がおかしい!うちの子はそんな子には育てません!」

まぁ。

何でも上手いのは良いこと…なのか?

とりあえず。

「お前が悪い訳じゃないから、今日はその特技はしまっとけ」

「うん」

案外素直に、すちゃ、と立ち上がる令月。

馬鹿正直と言うか、何と言うか。

放っといたら、本当に切腹しかねん勢いだったな。

「大丈夫か?泣かなくて良いのか?」

「全然涙出てこないけど…。出した方が良いなら、胡椒でも」

「いや出ないなら出さなくて良いから。ってか何で胡椒持ち歩いてんの?」

お前のポケットは四次元的なアレなのか?

そもそも、胡椒で出るのはくしゃみでは?

「あれからどうなったの?」

謝罪が終わるなり、令月は俺達にそう尋ねた。

出来れば、令月には教えたくないが…。

教えない訳にはいかないな。

シルナに目配せすると、仕方ないなぁみたいな顔で、シルナが答えた。

「ちゃんと、フユリ様に話してきたよ」

「何て言われた?その糞餓鬼殺してこいって言われた?」

「言わない。フユリ様は、そんなこと言う人じゃないよ」

シルナは、令月の頭にポンと手を置いて、そう言った。

「僕の処分については?まさか不問という訳にはいかないでしょ」

「それがまさかの、不問なんだよ」

「…」

と言うか。

不問になるよう、シルナが話を持っていったのだ。
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