神殺しのクロノスタシス2
「ジャマ王国が、個人の人権を著しく軽視した国策を取っていること、また、そのような行為を黙認していることは、私も知っていました」

そうだろうな。

「とはいえ…まさか、これほどとは思いませんでしたが…」

「…」

「物心つかない子供を売り買いし、保護するのではなく、人殺しの兵器に育てるなど…。また、それを取り締まるでもなく黙認し、実質認めていること…。私は一国の長として、断固としてジャマ王国に抗議致します。そのような人権の侵害、決して許されることではありません」

「同感です」

俺もだ。

この場にいる誰もが、同じ気持ちだ。

「ジャマ王国が、この度の件について、ルーデュニア聖王国にこれ以上の干渉をしてくるなら、私は黙っていません」

…その言葉が聞きたかった。

これで、いざとなったとき、自由に動ける。

フユリ様は、ルーデュニア聖王国は、俺達の味方だ。

「シルナ学院長、私はこの度の件について、ルーデュニア代表として、正式にジャマ王国に抗議の文書を…」

「…畏れながら、フユリ様」

「何でしょう」

「この度の件について、これ以上『こちらから』ジャマ王国に干渉するのは、控えて頂けないでしょうか」

ここからは、フユリ様との交渉だ。

女王陛下と交渉など、恐ろしくて出来たもんじゃない。

しかしシルナは、教え子の為ならそれすら躊躇わない。

「もしジャマ王国が抗議を受け、国際批判に晒されることを恐れ、黒月令月を正式にジャマ王国に帰国させると返答されてしまったら…」

「…!」

…そう。

それが、一番怖いのだ。
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