神殺しのクロノスタシス2
お前どんだけ寂しいんだよ。

ってか生徒の方は、そろそろお前のこと忘れてると思うぞ。

毎日毎日めそめそして、なんかもう面倒臭いので。

とりあえず無視していよう。

イレースなんか、つい三日ほど前まで、「いい加減元気を出しなさい」なんて言ってたが。

ここ数日は、もう諦めたのか、何も言わない。

放置である。

彼女は賢いよなぁ。

出来れば俺も、完全スルーしておきたいのだが…。

すると、そこに。

「お邪魔します。シルナ学院長」

聖魔騎士団魔導部隊隊長にして、聖魔騎士団副団長。

シュニィ・ルシェリートその人が、学院長室を訪ねてきた。

「あ、シュニィ」

「こんにちは、羽久(はつね)さん」

「何か用?」

「えぇ。学院長に見てもらいたいものが…」

書類の束を持って、部屋に入ってきたシュニィだが。

「うぅ…。ひっく、さびしいよぅ…」

「…」

「…」

「…無理そうですね」

「…済まん」

って、俺が悪いんじゃないんだけどな。

こいつが勝手に落ち込みまくってるだけで。

毎年やってるからな、これ。いい加減慣れろよ。

「俺で代われるならやるけど」

学院長がてんで役に立たないので、俺が代理を務められることなら、やるが。

しかし。

「済みません。今度のこれは、シルナ学院長でなくては…」

「あー…」

俺では代われない奴ね。はいはい。

さて、どうしたものか。

「急ぎ?急ぎなら、今すぐぶん殴ってふん縛って、無理矢理叩き起こすけど」

何ならイレースも連れてきて、二人がかりで。

しかし。

「いえ、大丈夫です。四月になったら…また来ます」

四月になれば、新しい生徒達が入ってくる。

すると途端、頭お花畑になるからな、この人。

まぁ、大事な仕事だったら、グロッキーな今のシルナを叩き起こすより、四月になるのを待った方が良さそうだな。

すると。

「入りますよ、学院長…あら」

「こんにちは。お邪魔してます」

イレースが、学院長室に入ってきた。

「お客様がいらしてたんですね。そうとも知らず、お構いもせず申し訳ありません」

「あ、いえ私は」

「済みませんね、こんな情けない学院長で…。せめて、お茶でも淹れましょう」

「そんな、お構いなく」

「良いんですよ。今なら、学院長秘蔵のお菓子とお茶を食べ放題飲み放題ですし。お時間が許すなら、是非ゆっくりしていってください」

今のシルナは、自分の秘蔵の菓子を勝手に摘ままれても、さっぱり気づかないだろうからな。

イレースの言う通り、今なら食べ放題飲み放題だ。

「あ、あはは…。では、お言葉に甘えて…」

忙しいところ、折角来てくれたんだからさ。

シルナのお気に入り菓子くらいは、食べてってもらわないとな。
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