神殺しのクロノスタシス2
「救い難い愚か者共め…!奴の過去を知ってなお、シルナ・エインリーに味方するとは…!」

味方どころか、利用されてると分かっていながら、シルナ・エインリーのもとにいるなど。

そこまでして、惹かれる何かが、あの男にはあるのかもしれないな。

シルナ・エインリーを憎む彼女には、とても理解出来ないだろうが。

「あのジュリス・レティーナまでシルナ・エインリーの手駒なんで。実は洗脳魔法でも使ってんじゃないですか?」

だとしたら、僕も危ないな。

いつの間にか、あの学院長に取り込まれてしまうかもしれない。

あぁ、恐ろしい恐ろしい。

「…御託は良い。聖魔騎士団から派遣されてきた魔導師は誰だ?」

「クュルナ、無闇・キノファ、ジュリス・レティーナの三人です」

「それ以外の魔導師は?」

「今のところは見ていません。それ以外は、相変わらず羽久・グラスフィアとイレース・クローリア…。あとは、シルナ・エインリーの分身ですね」

それ以外のイーニシュフェルトの教員はいない。

まぁ、僕も職員室に堂々と入って、一人ずつ教師を点呼してる訳じゃないから?

もしかしたら、他にもいるのかもしれないけど。

いたとしても、僕が感知出来ないってことは、大した魔導師ではない。

物の数のうちに入れる必要はない。

「派遣されてきた三人共、シルナ・エインリーの手駒か」

「僕も、彼らの授業はそんなに受けてませんけど…」

それに、じろじろ観察したら、正体がバレかねないからな。

でも。

「三人共、シルナ・エインリーの為なら命を投げ出すでしょう。完全に操り人形です」

「…愚か者共か」

彼女は、そう吐き捨てた。

…本当にそうか?

ここで彼女と議論して、下手に喧嘩別れしたら、それこそ別れ話になってしまうから…黙っているけど。

誰かの為に、命を投げ出すっていうのは…その行為自体は、悪いことではないはず。

大体あなたも、その為にこうしているのではないのか。

ただ、目的が違うというだけで…。
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