神殺しのクロノスタシス2
「あっ、見て見て~ほら。羽久、今日の運勢、一番だって!」

「…」

「『恋愛運上昇!絶好の出会いのチャンスです!気になる人がいたら、積極的にアタックしましょう!』だって~!」

「…」

「一方の私は、どれどれ…。…え!?最下位!?」

ガビーン、とするシルナ。

「『今日のあなたは何一つ良いことはありません。何をやっても全く報われません。むしろ悪いことしか起きません。身辺に厳重に注意しましょう』だって」

お前、今日死ぬんじゃね?

ボロクソ書かれてんじゃん。

「そ、そんな…!私どうしたら良いの…!?」

「…うん」

まず、その占い雑誌を読むのをやめることから始めたらどうかな。

この男には、危機感というものがないのだろうか。

分かっているのか。この状況が。

お前、『禁忌の黒魔導書』を解き放った犯人の捜査を頼まれてるんだぞ。

捜査が難航しているのは分かる。

だが。

占い雑誌を読んでいる暇はあるのか。

「えぇと、ラッキーアイテムは…えっ、抹茶のクッキー!?どうしよう、私抹茶苦手なんだよなぁ。苦いし。チョコのクッキーじゃ駄目かなぁ…」

「…シルナ」

「え?何?」

「ちょっと、その雑誌貸せ」

「あ、羽久も見る?」

「可燃ごみに捨てる」

「えぇぇぇぇ!やめてぇぇぇ!」

シルナは、半泣きで雑誌を抱き締めた。

この野郎。

「これね、これね、生徒に借りたんだよ!三年生の生徒に!」

「何だと?」

生徒の私物だったのか。

じゃあ、勝手に捨てる訳にはいけないな。

これがシルナの買ったものなら、今すぐ生ゴミ入れにダンクシュートしていたところだ。

魔導師が、占い雑誌を読むな。

仮にも、イーニシュフェルトの聖賢者ともあろう者が。

そんなだから、最下位なんだよ。

「何で、そんなもの生徒に借りてんだよ…」

「え?貸してくれたんだもん」

そりゃお前が「貸して」と言えば、貸してくれるだろうよ。

学院長相手に、嫌とは言えまい。

「それがね、三年生の教室の前を通り過ぎたときにね」

と、頼んでもないし、聞きたくもないのに、シルナは話し始めた。

この雑誌を借りてきた経緯を。
< 94 / 742 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop