あの場所へ

3.豊山へ


俺はそのまま学校をでると,
七海の手を握ったまま,歩き続けた。

七海もそんな俺に何もいわず,
されるがままついてきていた。

俺は一人になりたいときに,
いつも来ている場所に,
七海を連れて行った。

豊山の途中にあるこの空き地は,
道路から中に入っていて,

外から見られることもないばかりか
辺りに明るい光もなく,
星を見るのにも快適で,

俺にとって一番の場所だった。



七海はしばらく下をむいて,
鼻をすすっていたが,顔を上げると

「ありがとう。
今度は私が上妻くんに助けられたね。」
と明るく答えた。


「大丈夫か?」
俺は全然意に返さないように,
努めて冷静に聞いた。



「うん。大丈夫よ・・・・」

そういうと,
急に七海は驚きの声をあげた。

「わぁ。ここ。知ってたの?」 

満面の笑みで俺を見上げると聞いた。



「ああ…ここは,実は俺の・・」 
俺の言葉をさえぎって,
七海は興奮気味に話し始めた。



「ここね。
私の一番のお気に入りの場所なの。
一人になりたいときとか,
嫌なことあったときに,ここに来るの。
ここで叫んでも誰にも聞かれないでしょ。
それにね・・・・」


さっきまで動揺しまくって,
泣き顔になっていた七海は
どこにいったのか,

生き生きと輝く笑顔いっぱいの顔で
俺をみて話を続けていた。

「よかった。」
俺は七海に気づかれないように息をついた。

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